幻の馬

幻の馬 - 作品紹介

『幻の馬』は、1955年7月20日に公開された日本映画で、大映制作のカラー作品です。この映画は、10戦無敗、レコード優勝7回という輝かしい成績を誇りながら、東京優駿（日本ダービー）の約2週間後に急死した競走馬トキノミノルを主題にしています。

制作の背景

本作は、馬主の永田雅一が自身の馬トキノミノルの死を悼むために製作されました。1950年代最初の本格的な競馬映画とされ、当時の東京競馬場の様子をカラー映像で記録している貴重な作品です。特に、バリヤーゲートからのスタートシーンは必見のシーンであり、競馬ファンのみならず多くの人々に感動を与えました。キャストには、当時現役だった実際の騎手（例如：遊佐晃彦や二本柳俊夫）が出演しており、リアルさを増しています。

この映画は、1955年に文部省選定映画に選ばれ、さらに第9回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出展されました。監督やスタッフは、1959年に再び集結し、競馬を題材にした別の作品『花の大障碍』を制作しています。長い間ソフト化されていなかった本作ですが、2015年には満を持してDVD化が実現しました。

撮影地と背景

映画の撮影は、青森県八戸市のタイヘイ牧場で行われました。その背景には、鮫角灯台や八戸線の蒸気機関車も映し出され、特に、主人公であるタケルが東京競馬場に向かうシーンは、種差駅（現・種差海岸駅の無人駅）で撮影されています。かつて競走馬としての夢を追った人々の情熱が映画の中に色濃く映し出されています。

あらすじ

物語は、白石牧場に生まれたタケルの成長を描いています。冬の寒い朝、真っ白な野原に母馬千鳥がいる中で、タケルは誕生します。家族全員がタケルの誕生を喜び、期待に満ち溢れています。しかし、運命は容赦なく、タケルの父弥助は山火事の際に命を落とします。タケルは、兄の一郎とともに騎手養成所に入ることになりますが、別れの悲しみと希望を胸に抱えて成長していきます。

タケルはデビュー戦でうまくいかず失格となりますが、その後は兄の応援もあり10戦全勝を成し遂げます。しかし、ダービーの直前に厩舎で火事が発生し、タケルは興奮して足を痛めてしまいます。騎手としての悲劇と栄光が交錯する中、家族との絆が深まっていく姿が描かれています。物語は、タケルがダービーを迎えるまでの道のりを感動的に表現しています。

キャスト

この映画には、多彩なキャストが登場します。白石弥助役を見明凡太朗、白石雪江役を若尾文子が務め、他にも遊佐晃彦や岩垂幸彦など多くの実力派が出演しています。特に、小島太氏がこの作品を見て騎手を志したというエピソードもあり、映画が持つ影響力を示しています。

結び

『幻の馬』は、競走馬の栄光と悲劇、そして家族の絆を描いた名作であり、1950年代の日本競馬の姿を知る上で欠かせない作品です。競馬を愛する人々にとって、心に残る作品となることでしょう。

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