広島グリーンフェリー

広島グリーンフェリー：瀬戸内海の夜行航路と時代の波

広島グリーンフェリー株式会社は、かつて広島港と大阪南港を結ぶカーフェリー航路を運航していた企業です。1972年の開業から10年間という短い歴史でしたが、その興亡は、日本の高度経済成長期の終わりと、それに伴う社会構造の変化を象徴する出来事と言えるでしょう。

開業と順風満帆な時代

同社は、商船三井系列のジャパンラインを筆頭に、広島の地元企業からの出資を受けて1972年に設立されました。就航当初は『グリーンアロー』と『グリーンエース』の2隻のフェリーで、広島と大阪を9時間半で結ぶ航路を開設。需要の高まりを受け、1日2往復に増便するなど、順調なスタートを切りました。当時、旅客輸送に加え、福山通運や日本運送といった大手運送会社からの貨物輸送も担い、瀬戸内海の重要な物流ルートとして役割を果たしていました。さらに、大阪と博多を結ぶ航路の開設も計画されていたようです。

オイルショックと時代の変化

しかし、1973年のオイルショックを契機に、状況は一変します。燃料費の高騰は経営を圧迫し始め、それに加えて1975年の山陽新幹線全線開通、1978年の中国縦貫自動車道三次インターチェンジまでの延伸は、旅客と貨物輸送双方に大きな影響を与えました。高速で快適な新幹線や自動車の台頭により、フェリーを利用する旅客や貨物輸送の需要は減少。広島グリーンフェリーは、時代の変化に対応できずに苦境に陥ることとなりました。

経営悪化と航路休航

経営悪化は深刻さを増し、最終的には50億円もの累積損失を計上する事態に。増資や新たなフェリー『グリーンアーチ』の投入といった対策も講じられましたが、事態を好転させるには至りませんでした。1982年3月31日、広島―大阪航路は休航。そして同年4月、会社は解散という結末を迎えます。

フェリーとその後

広島グリーンフェリーが保有していた3隻のフェリー、グリーンアロー、グリーンエース、グリーンアーチは、いずれも神田造船所で建造された大型船でした。航路休航後、これらのフェリーは売却され、国内外の他の航路で活躍を続けました。例えば『グリーンエース』と『グリーンアーチ』は来島どっくに売却され、「おくどうご6」と「おくどうご8」に改名され、ダイヤモンドフェリーに傭船されたと伝えられています。一方、『グリーンアロー』はギリシャに売却され、2005年に解体されたようです。

まとめ

広島グリーンフェリーの短い歴史は、高度経済成長期の終わりとともに訪れた、社会構造の変化の激しさ、そして企業が変化の波に対応していくことの難しさを改めて示唆しています。フェリーは時代とともに姿を消しましたが、その存在は、瀬戸内海の交通史において、重要な一ページを刻んだと言えるでしょう。

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