広島県道391号加茂福山線

広島県道391号加茂福山線は、広島県福山市内を南北に縦断する一般県道です。この路線は、福山市加茂町字中野の国道182号交点から始まり、福山市横尾町1丁目の国道313号交点に至る主要経路（本線）と、途中から分岐して福山市御幸町大字森脇から同大字中津原までを結ぶ新たな経路（新道）から構成されています。福山市北部の加茂地区と南部の横尾地区を結ぶ、地域にとって欠かせない交通軸の一つと言えます。

歴史的背景

本県道は、1994年（平成6年）4月1日付けの広島県告示第406号により、正式に県道として認定されました。この路線の起源は、かつて国道182号（当時国道314号と重複指定）として供用されていた区間の一部にあります。1970年代前半に福山市加茂町から福山市明神町の国道2号までのバイパスが建設された後も、旧道にあたる本区間は長い間、国道の指定から外されることなく維持されていました。県道認定後の2001年（平成13年）3月27日には、新道の一部区間である福山市御幸町大字森脇から郷分町を経由して中津原までの区間が開通し、地域の交通円滑化に貢献しています。

路線が抱える現状と将来像

現在の路線の状況は多岐にわたります。本線の起点側、福山市加茂町から加茂川を渡る双葉大橋の北詰にかけての区間は、路線バスも利用する生活道路としての側面も持ちますが、道幅が比較的狭いため、通行には十分な注意が求められます。一方、本線の終点付近にある鶴ヶ橋南詰交差点は、JR西日本福塩線との平面交差（鶴ヶ橋踏切）に隣接しており、広島県内で最初に踏切と連動する信号機が導入された地点として特筆されます。信号が設置される以前は、国道同士の交差点でありながら信号機がなく、踏切番が常駐して手作業で遮断機を操作していました。

新道は現在、福山市御幸町大字中津原で行き止まりとなっていますが、福山市の都市計画では、この新道をさらに南へ延伸させる複数の構想が存在します。具体的には、福山市久松台を経由して福山市西町の国道2号に接続する案と、福山市千田町藪路で国道313号に合流させる案が検討されています。しかし、これらの案にはそれぞれ課題があり、久松台経由案では閑静な住宅街の通過や、区間による車線数の変化（4車線から2車線への縮小）、千田町藪路経由案では国道313号の拡幅が必要となる点や、加茂・府中方面からの交通には利便性が向上する一方で、井原方面からの交通は引き続き狭隘な横尾地区を通過せざるを得ない不均衡、あるいは渋滞地点が単純に南にずれる可能性などが挙げられており、最終的なルート決定には至っていません。

さらに、既存の鶴ヶ橋の老朽化や福塩線との平面交差に伴う安全性の懸念、横尾地区で頻発する渋滞や道路の狭さを解消することを目指し、福山市御幸町大字中津原から福山市横尾町までの区間において、新たなバイパス道路を建設する計画も進められています。これは、本路線の機能強化および地域交通の円滑化に向けた重要な取り組みです。

本県道は、一部区間で他の県道と重複して指定されています。本線側では、福山市御幸町大字森脇の森脇（西）交差点から同大字中津原の中津原三差路交差点にかけて、広島県道395号川南近田線と重複します。また、新道側では、福山市郷分町の大渡橋西詰交差点から福山市御幸町大字中津原の大渡橋東詰交差点の間で、広島県道378号御幸松永線との重複区間が存在します。

沿線と地理

路線上には、加茂川や芦田川などの河川を渡るためにいくつかの橋梁が架けられています。代表的なものとしては、双葉大橋、牛田橋、森脇橋、大渡橋などがあります。また、福山市駅家町から郷分町にかけては、石原トンネルが位置しています。

この県道は、その全線が広島県福山市内を通過します。地理的な特徴として、並行する形でいくつかの歴史的な旧街道が存在した地域を通っています。福山市加茂町から御幸町大字森脇にかけては東城往来（東城街道）が、御幸町大字森脇から横尾町1丁目にかけては府中往還（出雲大社道）が、そして御幸町大字中津原から横尾町1丁目にかけては近世山陽道（西国街道）がそれぞれ並行していた区間があり、古くから交通の要所であったことが偲ばれます。

沿線には、地域社会を支える様々な施設が点在しています。教育機関としては福山平成大学や福山市立幸千中学校、医療機関としては公立学校共済組合中国中央病院があります。また、高屋川浄化施設や中津原浄水場といった重要なインフラ施設も見られます。歴史的な場所としては、1930年（昭和5年）に昭和天皇が訪れたことをきっかけに、その周辺が「御幸」という地名になったとされる正戸山があります。レクリエーション施設としては、幸千中学校の西側にある福山ゴルフ倶楽部や、平和学習の拠点であるホロコースト記念館も沿線に位置しています。さらに、福山市のシンボル的存在である芦田川や、河川について学べる芦田川河川広報室芦田川見る視る館もこの県道沿いにあります。

広島県道391号加茂福山線は、日々の生活や産業活動を支えるだけでなく、地域の歴史や自然、文化に触れる機会も提供する、福山市の交通ネットワークにおいて重要な役割を担う路線です。

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