広島県道72号福山沼隈線

はじめに

広島県道72号福山沼隈線は、広島県福山市内に位置する主要地方道として指定された県道です。福山市の中心市街地と沼隈地域を結ぶ重要な役割を担っており、沼隈半島の北東から南西にかけて、芦田川流域から瀬戸内海方面へと斜めに横断するルートをとっています。

沿革

この路線は、かつて福山市中心部では「さんな道」、沼隈地域では「福山往還」として知られていた旧街道を基盤としています。明治時代に入り、地域の振興を目指して大規模な改良が実施されました。1901年（明治34年）から6年を費やし、草戸、山南、熊野、瀬戸、水呑の沼隈郡内5か村が組合を結成して道路の拡幅・改修工事を進めました。これにより道幅は約3.6メートル（約2間）に広げられ、一部の経路も変更されて荷車の通行が容易になりました。大正時代の終わり頃には自動車の通行も可能となり、近代的な道路へと変貌を遂げました。

道路の管理体制も変化しました。1924年（大正13年）に沼隈郡道に編入された後、1930年（昭和5年）には広島県の県道に指定されます。戦後の1960年（昭和35年）には、広島県告示第682号により「広島県道248号下山南福山線」として改めて認定されました。その後、1972年（昭和47年）に行われた広島県の県道番号体系の見直しに伴い、「広島県道388号下山南福山線」と改称されました。

道路改良への地元の期待も高く、1966年（昭和41年）には「県道下山南福山線改修促進期成同盟会」が組織され、道路の改修促進運動が展開されました。その成果もあり、1986年（昭和61年）には路線の2車線化工事が完了し、通行能力が向上しました。そして、1993年（平成5年）5月11日の建設省告示第1270号により、この路線は主要地方道「福山沼隈線」として位置づけられることになります。これを受け、翌1994年（平成6年）4月1日には広島県告示第407号をもって、現在の「広島県道72号福山沼隈線」という路線番号と名称に改められ、主要地方道としての役割を明確にしました。さらに、2005年（平成17年）2月1日に沼隈郡沼隈町が福山市に編入されたことにより、この路線は全線が福山市の市域のみを通過する形となりました。

現在の状況

現在の広島県道72号福山沼隈線は、歴史的な経緯から整備されたため、すでに2車線化はされているものの、その道路規格は比較的新しい道路に比べると低い箇所があります。特に、福山市中心部に近い起点の「洗谷三差路交差点」周辺では、朝夕の通勤時間帯を中心に慢性的な渋滞が発生しており、交通上の大きな課題となっています。この路線は、福山市の中心部と沼隈地域、さらにその先の内海地域を結ぶ上で不可欠な幹線道路として機能しており、地域の生活や産業活動を支えています。

こうした状況を改善するため、バイパス道路である「福山沼隈道路」の整備計画が進められています。この新しい道路が完成すれば、現道が抱える交通容量や規格の問題が解消され、福山地域全体の交通ネットワークが強化されることが期待されています。また、福山市中心部から沼隈地域の中心部や内海地域へ向かうルートとしては、本路線の「天神山下交差点」と広島県道47号鞆松永線の「林崎交差点」を結ぶ福山市道も存在します。この市道は2車線で整備されていますが、道路の線形に問題があるため、大型車両の通行が規制されており、全ての交通を担うことはできません。

路線データとしては、広島県告示第407号に基づき、起点が福山市、終点が旧沼隈郡沼隈町（現在の福山市沼隈町）とされています。実延長距離は9.68キロメートルです。

地理

広島県道72号福山沼隈線は、路線の全区間が広島県福山市内に収まっています。そのルート上では、いくつかの主要な道路と交差しています。起点の「洗谷三差路交差点」では広島県道22号福山鞆線に接続し、また、一部区間である水呑町から瀬戸町長和にかけては、広島県道251号後山公園洗谷線、通称「福山グリーンライン」と重複しています。さらに、熊野町では広島県道381号熊野瀬戸線や広島県道382号熊野松永線と、終点の沼隈町下山南にある「平迫交差点」では広島県道47号鞆松永線と交差しています。

沿線の魅力

本路線の沿線や周辺地域には、訪れる価値のある様々な施設や場所が存在します。主要な施設としては、地域の重要な水源の一つである熊野水源池（熊野町）、特別支援教育を提供する広島県立沼隈特別支援学校（沼隈町上山南）、美しい景観を持つ八日谷貯水池（沼隈町中山南）、そして地域教育を担う広島県立沼南高等学校（沼隈町下山南）などがあります。

また、名所・旧跡・観光地としては、熊野水源池の近くに位置し、かつての山城の歴史を今に伝える一乗山城跡（熊野町）があります。沼隈町中山南の八日谷は、平家の落人伝説が伝わる静かな集落で、美しい菖蒲園が整備されており、季節には多くの人々が訪れます。さらに、遊園地や宿泊施設などを備え、広大な敷地内で一日楽しめる総合レジャー施設「みろくの里」（藤江町、沼隈町上山南）も路線から比較的近い場所に位置しており、地域の主要な観光スポットとなっています。

これらの施設や名所は、広島県道72号福山沼隈線が単なる交通路としてだけでなく、地域の生活や歴史、そして観光を結びつける重要な役割を果たしていることを示しています。

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