広島高等学校 (旧制)

旧制広島高等学校：軍都・文教都市広島に花開いた名門校

旧制広島高等学校（以下、広高）は、1923年（大正12年）に設立された官立の旧制高等学校です。略称は「広高」。国内の官立高等学校としては、姫路高等学校と共に最後発（25番目）にあたり、広島高等師範学校や広島高等工業学校が既に存在したことが、その設立の遅れに繋がったと言われています。設立費用80万円のうち、40万円は広島県が負担しました。現在の広島大学総合科学部（旧教養部）の構成母体であり、卒業生によって「広島高等学校同窓会」が設立されています。

広高は3年間の修業年限を持ち、文科と理科からなる高等科を設置していました。隣接県には既に旧制高等学校が設立されていたため（山口県には山口高等学校、岡山県には岡山第六高等学校、島根県には松江高等学校、愛媛県には松山高等学校など）、生徒の大半は地元出身者でした。広島が軍都・文教都市であったことから、教員や軍人の子弟も多く在籍していました。

広高の大きな特徴の一つは、高い大学進学率です。卒業生のほとんどが東京帝国大学や京都帝国大学に進学し、特に法学部や経済学部を志望する学生が多かったと言われています。1930年（昭和5年）には、全国一の進学率を記録しました。校風は「蛮カラ」色よりも穏やかで、学究的で紳士的な雰囲気だったと評されています。1924年には寄宿舎「薫風寮」が建設されましたが、入寮希望者は少なかったようです。

現在、「広島高等学校」を名乗る学校としては、広島県立広島高等学校や、かつて存在した広島工業大学付属広島高等学校（現・広島なぎさ中学校・高等学校）などがありますが、これらは旧制広島高等学校とは全く関係ありません。

沿革と原爆被災

広高は1923年12月10日に勅令により設立され、1924年4月に入学式と授業が開始されました。1928年1月には開校式が挙行されました。しかし、1934年には人事紛争をきっかけとする全校ストライキが発生し、校長が辞任、生徒10名が処分される事態に発展しました。

1943年11月には学徒出陣壮行会が開催され、1944年からは呉海軍工廠、東洋鋼鈑下松工場、日本製鋼所広島製作所などに生徒が学徒動員されました。そして1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下により、広高も被災します。当時、多くの生徒は動員先におり、校地には航空輸送隊や通信兵が駐屯していました。被災により校舎は大きな損傷を受けましたが、火災は免れました。原爆による死者は教職員3名、生徒27名にのぼりました。

被災後、広高は日本製鋼所広島製作所の敷地内で授業を再開し、その後、大竹町に仮移転、1947年には復興した皆実町校舎に移転しました。1949年には国立学校設置法により広島大学に包括され、「広島大学広島高等学校」と改称。その後、1950年に廃校となりました。

校地の変遷と継承

設立以来、広高の校地は広島市皆実町（現在の南区翠一丁目）にありました。終戦間近には生徒が日本製鋼所広島製作所に動員されたため、薫風寮も同所内に移転しました。原爆被災後、校舎が使用不能となったため、1946年には大竹町に校舎を移転しました。生徒たちは募金活動を行い、1947年に皆実町校舎へ復帰しました。

新制広島大学移行後、校地は広島大学皆実分校（教養部）として使用され、その後、教養部が東千田町に移転する際に、広島大学附属中学校・高等学校が移転してきました。薫風寮は広島大学の学生寮として名称が継承されましたが、広島大学の東広島キャンパス移転に伴い廃寮となりました。現在も、広島城南西の中央公園に「広高の森」の碑、そして被爆死した教授・歌人の中島光風の歌碑が残っています。

広高講堂

1927年竣工の広高講堂は、鉄筋コンクリート造りの平屋建て（一部2階建て）の建造物です。原爆被災時、爆心地から2.69kmの距離にあったため、被害は軽微でした。戦後、広島大学教養部の施設として使用され、1961年には広島大学附属中学校・高等学校の講堂となりました。1998年には登録有形文化財に登録され、現在も現役で使用されています。

歴代校長と著名な出身者

広高には多くの著名な卒業生を輩出しました。丹下健三（建築家）、阿川弘之（作家）、富士川英郎（元東京大学教授）、福村晃夫（元人工知能学会会長）、など多様な分野で活躍した人物が数多くいます。また、政治家や経済界のリーダーなども輩出しています。

参考文献

本文中で紹介されている書籍や資料は、広高の歴史や被爆に関する貴重な情報を提供しています。これらの文献を参照することで、より詳細な内容を理解することができます。

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