広瀬大志 (詩人)

広瀬大志（ひろせ たいし）は、1960年3月23日に熊本県熊本市で生まれた日本の詩人です。早くから詩作の道を歩み始め、独自の詩的世界を構築してきました。その詩風はしばしば「詩のモダンホラー」と称され、読者に鮮烈な印象を与えています。「hotel」「しばりふじ」「漆あるいは金属アレルギー」「聲℃」といった同人誌に参加し、詩壇での交流や研鑽を積んでいます。

熊本県立済々黌高等学校を卒業後、明治大学文学部文学科フランス文学専攻で学びました。学生時代にあたる1981年には、井上幸治とともに同人誌「EONTA」を創刊し、詩人としての活動を本格的に開始します。翌1982年には、城戸朱理、田野倉康一、高貝弘也らと共に活動していた同人誌「洗濯船」に参加。ここで若き詩人たちとの交流を深めました。さらに1992年には自身の個人誌「妖気」を創刊するなど、積極的に表現の場を求めました。彼は文筆活動と並行して、音楽映像ソフト卸商社の取締役を務めるというユニークな経歴も持っています。

広瀬大志の詩世界は、怪奇、幻想、あるいは日常の裏に潜む不穏な気配などを独自の感性で捉え、読者を非日常的な空間へと誘います。「詩のモダンホラー」と評されるように、単なる恐怖ではなく、現代的な感覚で捉えられた不安や奇妙さ、深層心理に触れるような表現が特徴です。言葉の選び方やイメージの連なりは時に挑発的であり、読者の内面に強く訴えかけます。

1985年に詩集『水階』でデビューして以降、精力的に作品を発表し続けています。初期の詩集には「洗濯船石鹸詩社」から刊行された『アルパ但しオメガ』（1987年）があります。その後も『彩層GIZA』（書肆山田、1989年）、『浄夜』（矢立出版、1991年）などを刊行。1995年に思潮社から刊行された『喉笛城』は、その後の代表作につながる重要な一冊となりました。思潮社からは他にも『ミステリーズ』（1998年）、『髑髏譜』（2003年）、『ハード・ポップス』（2008年）、『草虫観』（2010年）、『激しい黒』（2013年）、『現代詩文庫 広瀬大志詩集』（2016年）、『魔笛』（2017年）など、多数の詩集が刊行されています。2009年に私家版として発表された長編詩『約束の場所』は、第11回小野十三郎賞の候補となりました。また、2010年刊行の『草虫観』は第44回小熊秀雄賞に、2017年刊行の『魔笛』は第9回鮎川信夫賞および第26回萩原朔太郎賞の候補に選ばれるなど、主要な詩の文学賞で高く評価されてきました。2023年にライトバース出版から刊行された『毒猫』は、その年の第2回西脇順三郎賞を受賞し、詩人としての確固たる地位を改めて示しました。これらの商業出版された詩集に加え、私家版での作品発表も続けており、2012年には短編集『ぬきてらしる』、2020年には『ライフ・ダガス伝道』などを刊行しています。

広瀬大志は、独自の感性と表現力をもって、現代詩壇において異彩を放つ存在です。彼の作品は、日常の奥に潜む深淵や、人間の内面に広がる奇妙な風景を描き出し、読者に新たな詩の可能性を提示し続けています。本業を持ちながらも弛まぬ創作活動を続ける姿勢は、多くの読者や詩人に影響を与えています。

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