広瀬川原車両基地
秩父鉄道の鉄道運営を支える重要な拠点の一つが、埼玉県熊谷市大麻生に所在する広瀬川原車両基地（ひろせがわらしゃりょうきち）です。この基地は、秩父鉄道が所有する全ての車両の保管場所であり、日々の保守点検から大規模な検査、修繕までを一手に担っています。
広瀬川原車両基地は、秩父鉄道のひろせ野鳥の森駅と大麻生駅の中間に位置する貨物駅、広瀬川原駅に隣接した広大な敷地を有しています。その歴史は1969年（昭和44年）3月に始まりました。それまで熊谷駅南側に分散していた工場と検車区の機能を統合・移転する形で開設されたものです。構内には、同社が保有する全ての車両が所属する熊谷車両区や、車両の全般検査や重要部検査といった詳細な点検・修理を行う熊谷工場など、車両のコンディションを維持するための様々な施設が整備されています。また、敷地の東側には、蒸気機関車などを方向転換させるための転車台も設置されており、基地の機能の多様性を示しています。
この基地には、秩父鉄道を走る多種多様な車両たちが集まります。2017年4月1日時点の配置車両を見ると、電車のラインナップとしては、かつて東京都交通局で使用されていた5000系（旧都営地下鉄6000形）、西武鉄道から譲渡された6000系（旧西武新101系）、そして東急電鉄で活躍した7000系（旧東急8500系）、7500系、7800系（いずれも旧東急8090系）などが名を連ねています。これらの多くは、他社から譲り受けた車両を秩父鉄道の仕様に合わせて改造したものです。
旅客輸送を担う電車以外にも、旧国鉄から転籍した12系客車や、観光列車「パレオエクスプレス」を牽引するC58形蒸気機関車、貨物列車や入換作業に欠かせないデキ100形、デキ200形、デキ300形、デキ500形といった電気機関車も所属しています。さらに、セメントなどの輸送に使用されるスム4000形、トキ500形、ヲキ・ヲキフ100形、ホキ1形といった貨車も多数配置されており、秩父鉄道の主要な役割である貨物輸送を支えています。
基地内での入換作業には、車籍を持たない入換機関車D15が使用されています。この車両は1969年製の元西武鉄道の機関車で、1997年（平成9年）からここ広瀬川原で活躍しています。
過去には、自社発注の最終増備車である500系、旧国鉄101系を改造した1000系、旧東急7000系、旧小田急電鉄1800形を改造した800形、そして急行「秩父路」用として導入された旧国鉄165系を改造した3000系（秩父鉄道初の冷房車）など、秩父鉄道の歴史を彩った様々な車両たちがこの基地を拠点としていました。
整備が完了した車両の車体には、この基地の工場で整備されたことを示す略号「熊谷工」が記されることがあります。
広瀬川原車両基地は、長らく一般には公開されていませんでしたが、2005年（平成17年）6月4日に初めてイベント形式での一般公開が実現しました。この試みが好評を博したことを受け、翌年からは毎年5月中旬頃に「わくわく鉄道フェスタ」と銘打った大規模な公開イベントが開催されるようになり、多くの鉄道ファンや家族連れで賑わう秩父鉄道の一大イベントとして定着しました。このイベントでは、車両展示や工場見学、部品販売などが行われ、普段は見ることのできない車両基地の内部を知る貴重な機会となっています。
基地の歴史には、印象的な出来事も含まれます。2012年（平成24年）8月には、構内での入換作業中にC58 363蒸気機関車が脱線する事故が発生しましたが、翌年にはJR東日本からの返却を受け、無事運転を再開しました。
近年では、2020年に電気機関車の運転体験イベントや回送列車に乗車して基地を訪れるツアーが告知されるなど、一般向けの企画も多様化しています。しかし、2021年以降は新型コロナウイルスの影響により、「わくわく鉄道フェスタ」の開催場所が一時的に三峰口駅隣接の秩父鉄道車両公園に変更されました。それでも、2023年には再びこの広瀬川原車両基地を会場としてイベントが開催され、多くの来場者で賑わいました。
基地の敷地内には、現役を退いた後も大切に保管されている車両があります。特に、2017年4月1日時点で保存車両として挙げられているのは、デキ100形のトップナンバーであるデキ101です。この機関車は1951年（昭和26年）に製造されたデキ8として登場し、架線電圧昇圧に伴いデキ101に改番された歴史を持ちます。一度は車籍を抹消されましたが、2006年の一般公開に合わせて整備され、登場時の茶色塗装に戻されて展示された姿は多くのファンを魅了しました。
また、車籍は持たないものの、敷地内に留置されている車両も存在します。例えば、旧都営地下鉄の5000系や旧国鉄の12系客車などがそれにあたります。これらの車両は、イベント時などに活用されるほか、基地の外側からもその姿を見ることができます。
過去には、1994年（平成6年）に廃車となったウェスチングハウス社製のデキ2や、旧小田急電鉄800系の制御電動車であるデハ805が構内で休憩所として利用されていましたが、これらは既に解体されており、現在の基地には存在していません。
広瀬川原車両基地は、秩父鉄道の安全・安定輸送を支える心臓部であると同時に、歴史ある車両たちが集まり、鉄道ファンとの交流の場ともなっている、まさに「生きた」鉄道博物館のような場所と言えるでしょう。
基地の概要
広瀬川原車両基地は、秩父鉄道のひろせ野鳥の森駅と大麻生駅の中間に位置する貨物駅、広瀬川原駅に隣接した広大な敷地を有しています。その歴史は1969年（昭和44年）3月に始まりました。それまで熊谷駅南側に分散していた工場と検車区の機能を統合・移転する形で開設されたものです。構内には、同社が保有する全ての車両が所属する熊谷車両区や、車両の全般検査や重要部検査といった詳細な点検・修理を行う熊谷工場など、車両のコンディションを維持するための様々な施設が整備されています。また、敷地の東側には、蒸気機関車などを方向転換させるための転車台も設置されており、基地の機能の多様性を示しています。
集結する車両たち
この基地には、秩父鉄道を走る多種多様な車両たちが集まります。2017年4月1日時点の配置車両を見ると、電車のラインナップとしては、かつて東京都交通局で使用されていた5000系（旧都営地下鉄6000形）、西武鉄道から譲渡された6000系（旧西武新101系）、そして東急電鉄で活躍した7000系（旧東急8500系）、7500系、7800系（いずれも旧東急8090系）などが名を連ねています。これらの多くは、他社から譲り受けた車両を秩父鉄道の仕様に合わせて改造したものです。
旅客輸送を担う電車以外にも、旧国鉄から転籍した12系客車や、観光列車「パレオエクスプレス」を牽引するC58形蒸気機関車、貨物列車や入換作業に欠かせないデキ100形、デキ200形、デキ300形、デキ500形といった電気機関車も所属しています。さらに、セメントなどの輸送に使用されるスム4000形、トキ500形、ヲキ・ヲキフ100形、ホキ1形といった貨車も多数配置されており、秩父鉄道の主要な役割である貨物輸送を支えています。
基地内での入換作業には、車籍を持たない入換機関車D15が使用されています。この車両は1969年製の元西武鉄道の機関車で、1997年（平成9年）からここ広瀬川原で活躍しています。
過去には、自社発注の最終増備車である500系、旧国鉄101系を改造した1000系、旧東急7000系、旧小田急電鉄1800形を改造した800形、そして急行「秩父路」用として導入された旧国鉄165系を改造した3000系（秩父鉄道初の冷房車）など、秩父鉄道の歴史を彩った様々な車両たちがこの基地を拠点としていました。
整備が完了した車両の車体には、この基地の工場で整備されたことを示す略号「熊谷工」が記されることがあります。
一般公開と歴史
広瀬川原車両基地は、長らく一般には公開されていませんでしたが、2005年（平成17年）6月4日に初めてイベント形式での一般公開が実現しました。この試みが好評を博したことを受け、翌年からは毎年5月中旬頃に「わくわく鉄道フェスタ」と銘打った大規模な公開イベントが開催されるようになり、多くの鉄道ファンや家族連れで賑わう秩父鉄道の一大イベントとして定着しました。このイベントでは、車両展示や工場見学、部品販売などが行われ、普段は見ることのできない車両基地の内部を知る貴重な機会となっています。
基地の歴史には、印象的な出来事も含まれます。2012年（平成24年）8月には、構内での入換作業中にC58 363蒸気機関車が脱線する事故が発生しましたが、翌年にはJR東日本からの返却を受け、無事運転を再開しました。
近年では、2020年に電気機関車の運転体験イベントや回送列車に乗車して基地を訪れるツアーが告知されるなど、一般向けの企画も多様化しています。しかし、2021年以降は新型コロナウイルスの影響により、「わくわく鉄道フェスタ」の開催場所が一時的に三峰口駅隣接の秩父鉄道車両公園に変更されました。それでも、2023年には再びこの広瀬川原車両基地を会場としてイベントが開催され、多くの来場者で賑わいました。
保存・留置車両
基地の敷地内には、現役を退いた後も大切に保管されている車両があります。特に、2017年4月1日時点で保存車両として挙げられているのは、デキ100形のトップナンバーであるデキ101です。この機関車は1951年（昭和26年）に製造されたデキ8として登場し、架線電圧昇圧に伴いデキ101に改番された歴史を持ちます。一度は車籍を抹消されましたが、2006年の一般公開に合わせて整備され、登場時の茶色塗装に戻されて展示された姿は多くのファンを魅了しました。
また、車籍は持たないものの、敷地内に留置されている車両も存在します。例えば、旧都営地下鉄の5000系や旧国鉄の12系客車などがそれにあたります。これらの車両は、イベント時などに活用されるほか、基地の外側からもその姿を見ることができます。
過去には、1994年（平成6年）に廃車となったウェスチングハウス社製のデキ2や、旧小田急電鉄800系の制御電動車であるデハ805が構内で休憩所として利用されていましたが、これらは既に解体されており、現在の基地には存在していません。
広瀬川原車両基地は、秩父鉄道の安全・安定輸送を支える心臓部であると同時に、歴史ある車両たちが集まり、鉄道ファンとの交流の場ともなっている、まさに「生きた」鉄道博物館のような場所と言えるでしょう。
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