広瀬平治郎

広瀬平治郎

広瀬平治郎（1865年10月31日 - 1940年5月16日）は、明治から昭和にかけて活躍した囲碁棋士です。方円社の5代目社長を務め、八段にまで昇りつめました。

生涯

広瀬平治郎は、美作国苫田郡東苫田村（現在の岡山県津山市）の農家に生まれました。幼い頃から学問に秀でており、12、3歳頃に父と兄の影響で囲碁を覚え、たちまち上達しました。家が貧しかったため、17歳で大阪に出て地方新聞編集の職に就き、20歳で東京で農商務省に勤務する傍ら、女流棋士の伊藤繁に師事して囲碁を学びました。

1891年（明治24年）、26歳の時に囲碁専業となり、方円社に入社。翌年には初段を許されました。その後、1893年に二段、1895年に三段、1898年に四段と順調に昇段しました。方円社では、『囲碁新報』や『初学独習新報』などの雑誌執筆・発行に尽力し、文才を発揮。巌崎健造社長の下で副社長格として活躍しました。1901年には石井千治との十番碁（先）で8勝2敗という好成績を収めました。1902年と1909年には、田村保寿との間で2度の十番碁を打ちました。1907年には、頭山満の主催で伊沢厳吉との十番碁も行っています。また、この頃には本因坊秀栄の四象会にも参加していました。1902年に五段、1912年に六段へと昇段しています。

1912年に二代目中川亀三郎が方円社長に就任すると、経営から離れました。1918年（大正7年）には、野沢竹朝との萬朝報対局が二日徹夜、三日がかりという激戦となり、広瀬が勝利したものの、憔悴のため勝継ぎの権利を放棄しました。同年、中華民国の国務院総理であった段祺瑞の招きで訪中。1919年にも、本因坊秀哉、瀬越憲作、高部道平らと共に訪中しています。

1920年に中川が方円社長を辞任すると、5代目社長に就任。翌1921年には七段に昇段しました。1922年の日本囲碁協会趣意書の発起など、碁界合同の気運が高まる中、方円社の丸ビル移転を計画し、後援者からの募金を募りますが、思うように集まらず、同年末に病に倒れてしまいます。その後、移転反対派であった鈴木為次郎と瀬越憲作が離脱して裨聖会を設立。翌1923年には、岩佐銈や加藤信らによる坊門との合同による中央棋院が設立されました。広瀬は病気のまま1923年末に社長を辞任し、棋界から離れて名古屋に隠棲しました。

1933年には、日本棋院より名誉棋士の称号を授与されました。1940年1月に本因坊秀哉が亡くなると、上京して棋院運営に協力しましたが、同年5月に脳溢血で倒れ、名古屋の自宅で亡くなりました。1942年には八段を追贈されました。

広瀬平治郎はクリスチャンであり、妻の仲子も女流棋士初段でした。門下には加藤信や岩本薫などがいます。長女の登美子は万代順四郎の妻です。

著作

『原理応用囲碁定石講義 : 実戦鬼手録』、斯文館 （大正13年）

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
瀬越憲作『囲碁百年』平凡社 1968年
安永一『囲碁百年』時事通信社 1970年

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