石井千治

石井千治（いしい せんじ）

石井千治は、明治時代から昭和初期にかけて活躍した囲碁棋士であり、二代目中川亀三郎としても知られています。1870年に茨城県で生まれ、1928年に気管支癌で亡くなるまでの間、囲碁界に多大な影響を与えました。方円社に所属し、八段にまで昇り詰め、同社の4代目社長も務めました。

生い立ちと初期の棋歴

石井千治は、旧笠間藩士の家に三男として生まれました。幼い頃から囲碁に親しみ、その才能は近隣地域で評判となるほどでした。14歳の時に旧笠間藩主の目に留まり、東京の屋敷に引き取られ、方円社の村瀬秀甫に師事することになります。1882年には方円社塾生第1号となり、1884年に初段、翌年には二段に昇段しました。当時、田村保寿、杉岡栄次郎と共に「方円社三小僧」と呼ばれ、将来を嘱望される存在でした。

林家との関係と石井姓への復帰

1886年、石井千治は林家の分家である女流棋士、林佐野の養子となり、一時的に林千治と名乗りました。しかし、1891年には石井姓に戻っています。

棋士としての挑戦

1892年、五段昇段を巡って小林鉄次郎との打込み碁を打ち、見事勝利して昇段を果たしました。1895年には、頭山満の主催で、当時本因坊秀栄門下となっていた田村保寿との十番碁に挑みます。結果は2勝7敗1ジゴと苦杯をなめました。その後も、1897年から1898年にかけて第2次、第3次と十番碁を重ねますが、いずれも田村に苦戦を強いられました。

方円社での活躍と中川家への入家

1901年に六段に昇段し、32歳という若さで方円社の副社長に就任しました。1903年には、中川亀三郎の遺言により中川家の養子となり、中川千治と名乗るようになります。しかし、方円社長の広瀬平治郎との不和が原因で、1907年に方円社を脱退してしまいます。

田村保寿との宿命の対決

方円社脱退後、石井千治は田村保寿との第5次十番碁に臨みます。この対局は、当時の囲碁界で大きな注目を集め、雑誌『日本及日本人』に棋譜が掲載されるほどでした。しかし、結果は1勝3敗で打ち込まれ、6局で中止となりました。

囲碁同志会の設立と方円社への復帰

1909年、石井千治は岩佐銈、野沢竹朝らと共に囲碁同志会を結成し、機関誌「囲碁世界」を発刊しました。同年、七段に昇段し、二代目中川亀三郎を襲名します。1912年には、巌崎健造の要請を受け、囲碁同志会を解散して方円社に復帰。巌崎の後を継いで方円社4代目社長に就任し、1920年まで務めました。

日本棋院の設立と晩年

1921年、石井千治は八段に昇段し、方円社の顧問となります。1924年の碁界大合同により、日本棋院設立に参画しました。日本棋院の手合割の改革により、本因坊秀哉とは先相先（互先より先番が多い）で対局することになり、1勝1敗の成績を残しましたが、その後の対局は実現しませんでした。1927年からは、大手合の東西対抗戦で審判役を務めました。

1928年、石井千治は気管支癌のため58歳で亡くなりました。酒豪であったと伝えられています。彼の遺志により、門下の小野寺新（中川新之）が養子となりました。

広岡浅子との交流

加島屋の実業家・広岡浅子は囲碁愛好家として知られており、自身もアマチュアとして上級者でした。彼女は石井千治を後援し、囲碁界の発展に貢献しました。

その他の棋歴

1896年、本因坊秀栄と十番碁（石井先）、2勝8敗
1901-1902年、広瀬平治郎と十番碁（広瀬先）、2勝8敗

石井千治は、激動の時代を生きた囲碁棋士として、その生涯を囲碁に捧げました。彼の功績は、今日の囲碁界にも深く刻まれています。

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