岩佐銈

岩佐銈

岩佐銈（いわさ けい、1878年 - 1938年11月1日）は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した囲碁棋士です。東京に生まれ、方円社の6代目社長として、日本棋院の設立に大きく貢献しました。没後、八段を追贈されました。

経歴

岩佐は、岩佐敬重の五男として生を受けました。幼少の頃から囲碁に親しみ、1895年に方円社に入社。その才能を開花させ、1897年に初段、1901年には四段へと昇段しました。1903年には、長野敬次郎との十番碁を打ちました。

1904年に五段となった岩佐は、1909年に石井千治、野沢竹朝とともに囲碁同志会を結成し、囲碁界の発展に貢献しました。1912年には、石井の社長就任に伴い方円社に復帰。1913年には六段に昇段し、その昇段披露会には200名を超える人々が出席しました。また、新聞碁の勝ち抜き戦では、「万朝報」で1回、「時事新報」で2回の5人抜きを達成するなど、その実力を示しました。1920年には、中外商業新報の坊社両派の混合敗退戦第1局で、坊門の井上孝平と対局しました。

日本棋院設立への貢献

1922年の裨聖会設立の声明には名を連ねませんでしたが、雁金準一、瀬越憲作、鈴木為次郎の裨聖会参加により主力棋士を欠き、社長の広瀬平治郎も病床にあった方円社を支えました。1923年1月、岩佐は方円社副社長格として加藤信とともに、本因坊秀哉ら坊門と合同して中央棋院を設立しますが、資金面での対立から、同年4月に方円社棋士は分裂し、方円社に戻りました。同年9月の関東大震災では、当時丸ビルにあった方円社を、四谷の岩佐宅に移しました。

1924年1月、広瀬の後を継いで方円社の6代目社長に就任。当時、秀哉を中心とした中央棋院、裨聖会、方円社の三派は経営難に苦しんでおり、震災の影響もあって、碁界合同の機運が高まっていました。岩佐は秀哉、裨聖会の雁金、大倉喜七郎らとともに碁会の大合同を画策し、同年5月には方円社を解散。同年7月、ついに日本棋院の設立を成し遂げました。

日本棋院では審査員を務め、第1回の大手合では秀哉と対局し、二子で中押勝を収めました。1926年には、鈴木為次郎、瀬越憲作とともに推挙され、七段に昇段。1927年からの大手合春秋二期制では、秀哉、中川亀三郎八段らとともに審判役を務めました。1938年に逝去。1942年、八段を追贈されました。

藤田豊次郎、光原伊太郎、藤村芳勝、福田義虎など、多くの棋士を育成しました。本因坊道策に傾倒し、道策の棋譜はすべて並べることができたと言われています。

著書

『置碁石立軌範』大野万歳館 1911年（中川亀三郎と共著）
『布石通解』碁界新報社 1911年
『布石精要』須原書店 1911年
『互先石立軌範』大野万歳館 1913年（中川亀三郎と共著）
『戦争要義』碁界新報社 1914年
『置碁石立図解』文進堂 1920年（胡桃正見と共著）
『囲碁定石通解』文進堂 1921年（胡桃正見と共著）
『布石詳解』日本棋院 1927年（瀬越憲作と共著）
『置き碁必勝法』誠文堂 1934年

参考文献

安藤如意、渡辺英夫『坐隠談叢』新樹社 1955年
* 安永一『囲碁百年』時事通信社 1970年

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