広瀬悦子

広瀬悦子

広瀬悦子（ひろせ えつこ）は、1941年11月9日に茨城県で生を受けた、日本を代表するヴァイオリン奏者の一人です。その類稀なる音楽的才能は幼少期より注目を集め、やがて国際的な舞台へと羽ばたいていくことになります。

初期の音楽教育は、岩本正蔵、久保田良作、斉藤秀雄、鷲見三郎といった日本のヴァイオリン界における重鎮たちに師事することでその基礎を築きました。特に、14歳という若さで挑んだ1955年の第24回日本音楽コンクールにおいて第1位を獲得したことは、彼女の輝かしいキャリアの序章となりました。

国内での成功を経て、さらなる研鑽を積むべく、広瀬氏は1957年に桐朋学園高校を中退し、パリ国立高等音楽院への入学を決意します。異国の地で、ヴァイオリンをガブリエル・ブイヨンに、室内楽をジャック・フェヴリエに師事。わずか一年後の1958年には同音楽院を卒業するという驚異的な速さで、その卓越した技量と音楽性を証明しました。

パリでの学びを終えた後も、彼女の探求心は尽きませんでした。1958年から1960年にかけてはヴァイオリンの巨匠ヘンリク・シェリングに、1961年には江藤俊哉から指導を受けるなど、常に最高の音楽家たちから薫陶を受け続けました。同年には日本の桐朋学園大学にて助教授として教鞭を執る機会も得、後進の育成にも力を注ぎ始めます。

演奏家としての活動も精力的に行われました。1955年以降、国内はもとより海外の主要なオーケストラと数多くの共演を重ねています。大阪フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団といった日本の楽団に加え、ボルドー市立交響楽団、ブリュッセル交響楽団、パリ音楽院管弦楽団など、その共演歴は国内外にわたります。また、1959年からはフランス各地で、そして1961年からは日本国内でも自身の名を冠したリサイタルを頻繁に開催し、ソロ奏者としての地位を確立していきました。

彼女の国際的な評価を決定づけたのは、1962年の主要な国際コンクールにおける連続受賞です。パガニーニ国際音楽コンクールでは第2位に輝き、同年のロン＝ティボー国際コンクールでも特別賞を受賞。これらの成功は、彼女が日本の枠を超え、世界の舞台で通用するトップレベルのヴァイオリニストであることを広く知らしめることとなりました。

教育者としてのキャリアも長く、桐朋学園大学での指導に加え、1981年からはフランスのリヨン音楽院でも長年にわたり学生たちの指導にあたりました。演奏と教育の両面で、国際的に活躍する日本の音楽家の先駆けとして、広瀬悦子はヴァイオリン界に多大な貢献をしました。

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