広目天

広目天（こうもくてん）について

広目天は、日本の仏教において重要な守護神の一体です。サンスクリット語では「ヴィルーパークシャ」と呼ばれ、種々の形態の眼を持つ者を意味しています。彼は四天王の一員として特に西方を護る役割を担っており、その存在は信仰において非常に重要視されています。その名称は「尋常でない眼」や「特殊な力を持つ眼」という意味を含んでおり、千里眼に通じるほどの特異な能力を象徴しています。

広目天は、仏教の守護神として仏堂に置かれ、本尊の左後方に安置されることが多いです。彼の姿は多様で、日本では一般に唐代の武将のような革製の甲冑をまとった形で描かれることが多いです。この装束は、力強さや防御の象徴として解釈されます。

また、広目天の持物に関しては、初めは筆を持ち巻物に何かを書いている姿が一般的でしたが、時代が進むにつれて様々な持物が描かれるようになりました。密教の胎蔵界曼荼羅に見られるように、彼は赤色の体色で右手に三鈷戟を持ち、左手は拳にして腰に当てた姿でも表現されます。さらに、羂索を持った姿も見られ、これらの描写は彼の多様な側面を示しています。

また、中国の民間信仰においては、赤い顔をした広目天が竜を持つ姿が多く見られます。このように彼の姿は文化や時代によってさまざまに変化し、それぞれの地域での信仰の形を反映しています。

広目天は元々、インド神話に登場する雷神インドラ（帝釈天）の部下として関連付けられていますが、その後仏教に取り入れられて、守護神の役割を果たすようになりました。彼は須弥山の4つの方向を護る四天王の一員であり、西側の守護を担っています。古代インドの宇宙観においては、地球上に存在するとされた4つの大陸のうちの一つ、西牛貨洲を守護するとされます。

さらに彼の配下には、諸龍王や富単那という病魔が含まれ、これらの存在が広目天の持つ力を象徴する要素となっています。彼の存在は、多くの人々にとって特異な眼による視覚や知恵の象徴とされ、その信仰は今日まで続いています。仏教の教えの中で、広目天は悪を退け、真実を見抜く力を持つ存在として、信者たちに親しまれています。

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