店村眞積

店村 眞積

日本のヴィオラ界を牽引する存在として知られる店村 眞積（たなむら まづみ）氏は、1948年8月31日に京都府で生まれました。ヴィオラ奏者としての輝かしいキャリアに加え、東京音楽大学教授や桐朋学園大学特任教授を務めるなど、音楽教育者としても多大な貢献をしています。

店村氏の音楽への道は、6歳でヴァイオリンを始めたことに始まります。東儀祐二、鷲見三郎、江藤俊哉といった名教師陣に師事し、幼少期からその才能を開花させました。中学3年生の時には、学生音楽コンクールの西日本大会でヴァイオリン部門第1位に輝くなど、早くから嘱望される存在となります。京都市立堀川高校音楽コースで音楽の基礎を固めた後、すぐには大学へ進まず、週に一度上京して江藤俊哉氏の個人レッスンを受けるという集中的な研鑽期間を過ごしました。

22歳で桐朋学園大学音楽学部に入学後も、オーケストラでヴァイオリンとヴィオラ双方を演奏していましたが、大学3年生の時、指揮者・教育者として偉大な足跡を残した齋藤秀雄氏から「ヴィオラをやりなさい」と勧められたことが、その後のキャリアを決定づける転機となります。この助言を機にヴィオラに専念することを決意し、1974年には桐五重奏団を結成してヴィオラを担当するなど、ヴィオラ奏者としての道を本格的に歩み始めました。

さらなる飛躍のきっかけとなったのは、東京文化会館で聴いたイタリア弦楽四重奏団のヴィオラ奏者、ピエロ・ファルッリ氏の演奏でした。その深い音色と表現力に強く感銘を受けた店村氏は、ファルッリ氏に師事することを強く望み、伝手を辿って連絡を取りました。その熱意が通じ、1976年春には連絡からわずか1週間後という異例の速さでイタリア・フィレンツェへ渡り、レッスンを開始。ルイージ・ケルビーニ音楽院に留学し、集中的にヴィオラの技術と音楽性を磨きました。留学から半年後には、フィレンツェ市立歌劇場管弦楽団の首席ヴィオラ奏者オーディションに挑戦。その才能は著名な指揮者リッカルド・ムーティ氏に認められ、見事に入団を果たしました。翌1977年にはジュネーヴ国際音楽コンクールのヴィオラ部門に出場し、第2位に入賞するなど、国際的な舞台でもその実力を証明しました。

フィレンツェ市立歌劇場で約8年間にわたり活躍した後、1984年に日本へ帰国。帰国後は、読売日本交響楽団のソロ・ヴィオラ奏者に就任するなど、国内の主要オーケストラで重要なポジションを歴任しました。2001年からはNHK交響楽団の首席ソリストを務め、その円熟した演奏で多くの聴衆を魅了しました。2011年6月には、東京都交響楽団の特任首席奏者に迎えられるにあたり、NHK交響楽団を退団。東京都交響楽団でも中心的な奏者として活動を続けましたが、2024年3月をもって同団を退団しました。その長年の功績に対し、2024年4月には東京都交響楽団から名誉首席奏者の称号が授与されています。

現在も、水戸室内管弦楽団やサイトウ・キネン・オーケストラといった国際的な活動を行うオーケストラのメンバーとして、また2012年9月からは京都市交響楽団のソロ首席ヴィオラ奏者として、精力的な演奏活動を続けています。使用楽器は、イタリアの著名な製作家によるアレッサンドロ・ガリアーノです。

受賞歴としては、1973年の日本音楽コンクール第3位、1977年のジュネーヴ国際音楽コンクールヴィオラ部門第2位に加え、2020年には京都市文化功労者として顕彰されています。録音活動も行っており、『Italian Viola Fantasy Vol.1, 2』などのアルバムを発表しています。

演奏家として国内外で輝かしいキャリアを築く傍ら、教育者としても多くの門下生を育成し、日本のヴィオラ界の発展に貢献し続ける店村眞積氏は、まさに日本の音楽史において重要な存在と言えるでしょう。

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