庚申丸

庚申丸（こうしんまる）

「庚申丸」は幕末に長州藩によって建造された西洋式の帆船です。1860年に完成したこの艦は、当時の海軍力を強化するための一環として建造されました。長州藩は早くから軍事改革に乗り出しており、1857年には最初の洋式軍艦「丙辰丸」を竣工させています。しかし、その造船所はすぐに閉鎖されてしまいました。その後、1858年には周布政之助が実権を握り、再び軍艦の建造が決定されました。

建造の経緯

新たに建造を担ったのは山田亦介で、恵美須ヶ鼻造船所にて進められました。今回は13人の技術者が長崎に派遣され、オランダからの知識を基に建設が行われました。1860年5月頃に竣工し、「庚申」の干支にちなんで名づけられました。「庚申丸」は全長約43m、幅約8mと、先代の「丙辰丸」に比べて大型の木造帆走軍艦でした。この大型の建造により、建設コストも約5倍に膨れ上がりました。

「庚申丸」の武装には、30斤砲6門が装備され、船体には3本のマストが立っていました。帆装形式については資料により異なる記録がありますが、戦闘時に交戦したアメリカ海軍の記録によれば、バーク型の横帆主体であるとされています。

運用と戦歴

竣工後、「庚申丸」は長州藩の軍艦として配備され、練習艦としての役割を果たしました。1863年5月11日、長州藩は攘夷を決行し、「庚申丸」とその姉妹艦「癸亥丸」による出撃が行われました。これらの艦は、停泊中のアメリカ商船「ペンブローク」に対して砲撃を行い、数発が命中するものの、逃走されてしまいました。

その後も長州藩は他の外国艦船に対して攻撃を行い、特に6月1日にはアメリカ艦「ワイオミング」に攻撃を受け、「庚申丸」と「壬戌丸」が撃沈されました。この戦闘では「庚申丸」あるいは「癸亥丸」の砲弾が「ワイオミング」に命中し、敵艦に対して一定の損害を与えることができました。

沈黙を余儀なくされた「庚申丸」ですが、その後復旧工事を受けて再び就役しました。慶応2年には第二次長州征討に参加し、「乙丑丸」と共に門司を襲撃し、その後も幕府艦に攻撃を仕掛けて活躍しました。また、戊辰戦争でも長州藩兵の輸送など重要な任務を遂行しました。

以上のように、「庚申丸」は長州藩の軍事活動にとって重要な役割を果たし、複数の戦闘を経験した艦船であることがわかります。歴史的な背景を持ちながら、幕末における日本の海軍力の発展に寄与した艦であったと言えるでしょう。

もう一度検索