廖永安

廖永安（りょう えいあん、1320年 - 1366年）は、元末の動乱期に頭角を現した軍人です。字は彦敬といい、無為州巣県を本拠地としていました。彼は、朱元璋が後の明王朝を建国する上で、重要な役割を担いました。

廖永安は、弟の廖永忠や同志の兪廷玉、兪通海、兪通源、兪通淵父子、そして趙普勝らと共に、巣湖周辺を拠点とする水軍勢力を築き上げました。その水軍は、1千艘もの船を擁する強大なものでした。1355年、朱元璋が和陽に拠点を構え、長江を渡河しようとした際、船が不足していることを知ります。その時、廖永安らは朱元璋に服属を申し出、その水軍を提供しました。朱元璋はこの申し出を「天の助け」と大いに喜び、水軍を手に入れたことで、その後の勢力拡大に大きな弾みがつきました。しかし、後に趙普勝は朱元璋の元を離反しました。

その後、廖永安は馬場河の戦いで、元の中丞であった蛮子海牙を打ち破る際に、その卓越した操船術を発揮しました。彼は、北西の風を巧みに利用し、朱元璋軍を迅速に長江の北岸へと渡らせ、采石や太平の攻略に大きく貢献しました。この功績により、管軍総管という要職に任じられました。

1356年3月、廖永安は兪通海と共に、蛮子海牙が守る水塞を攻略し、追撃戦で陳兆先を捕らえ、3万6千もの兵を降伏させました。この勝利によって、廖永安は建康翼統軍元帥というさらに高い地位に昇進しました。その後も、彼は鎮江や常州の攻略戦で活躍し、同僉江南行枢密院事という要職に就きました。常遇春と共に、銅陵や池州の攻略にも参加し、池州の北門を突破して敵将を捕らえるなど、数々の武功を挙げました。

1358年1月、廖永安は兪通海と共に石牌を攻め、張士誠の将である楽瑞を捕らえました。これにより、彼は同知枢密院事という役職に就きました。その後、常熟の福山港や通州の狼山で張士誠軍を打ち破り、多くの敵船を奪取しました。徐達に従って宜興を攻めた際、彼は勝ちに乗じて太湖に深く侵入してしまいます。そこで、張士誠の将である呂珍の軍と遭遇し、後続の援軍が間に合わず、船が浅瀬に乗り上げてしまったため、捕虜となってしまいます。張士誠は廖永安の才能を惜しみ、降伏を勧めたものの、彼は決してこれを受け入れませんでした。

朱元璋は廖永安が捕らえられたことを聞き、彼を「行省平章政事・楚国公」に封じました。廖永安はその後、8年間もの間、捕囚の身となり、47歳という若さでこの世を去りました。張士誠を滅ぼした後、朱元璋は廖永安の忠義を偲び、郊外で弔いの祭典を執り行いました。

廖永安の死後、1373年には「武閔」という諡号が贈られ、1376年には「開国輔運推誠宣力武臣」として、光禄大夫・柱国という官位が追贈され、鄖国公に改封されました。このように、廖永安は生前の武功と忠義が認められ、明王朝の建国に大きく貢献した人物として、後世にその名を残しています。

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