廣田神社

廣田神社：歴史と神話の息づく西宮の聖地

兵庫県西宮市大社町に鎮座する廣田神社は、古くから人々に崇敬されてきた歴史ある神社です。式内社（名神大社）であり、二十二社（下八社）の一社にも数えられ、かつては官幣大社として朝廷から厚い崇敬を受けていました。現在は神社本庁の別表神社に指定されています。

天照大神荒魂を祀る由緒

主祭神は天照大神の荒魂である撞賢木厳之御魂天疎向津媛命（つきさかきいつのみたまあまさかるむかいつひめのみこと）です。この神は伊勢神宮内宮の第一別宮荒祭宮祭神と同体とされ、非常に重要な神格として信仰を集めています。脇殿には、住吉大神、八幡大神、武御名方大神、高皇産霊神など、複数の神々が祀られています。

神功皇后と三韓征伐の伝説

廣田神社の創建は、古事記にも記されている神功皇后の三韓征伐に深く関わっています。皇后が三韓征伐に出発する際、天照大神の神託により、荒魂が先鋒として船を導くとされました。帰還の際に、難波の港で船が動けなくなった皇后は、神意をうかがい、天照大神の託宣に従い、荒魂を現在の地に祀ったと伝えられています。この創建と同時に、生田神社、長田神社、住吉大社も創建されたとされています。

悠久の歴史と数々の出来事

貞観10年（868年）には従一位に叙せられ、延喜式神名帳にも名神大社として記載されています。白河天皇の時代には二十二社の一社に選ばれ、朝廷から頻繁に奉幣勅使が派遣されました。平安時代後期からは神祇伯白川家と深い関係を持ち、代々参詣が行われていました。中世には和歌の神としても信仰され、社頭では歌合わせも行われた記録が残っています。

源頼朝は平氏討伐を祈願し、当社に広田荘を寄進したという歴史もあります。江戸時代には、豊臣秀頼による大規模な社殿改築が行われ、その後、水害による遷座を経て、現在の地に移転しました。明治4年には兵庫県で最初に官幣大社に列格、六甲山全山がかつては社領であったとも伝えられています。

太平洋戦争中の西宮空襲で社殿を焼失しましたが、戦後再建され、現在は1984年に完成した本殿が鎮座しています。2001年には鎮座1800年を迎えました。

西宮の地名と廣田神社

廣田神社を中心とする神社群は、京から西国への街道上に位置することから、「西宮」と呼ばれていました。この名称は後に、廣田神社周辺地域を指すようになり、現在の西宮市の地名にも繋がっています。えべっさんで知られる西宮神社は、元々は廣田神社の摂社でした。

境内と摂末社

境内には、本殿の他に第一～第四脇殿、拝殿、御神水、社務所、斎館、参集殿などが整備されています。また、境内社や摂社、境外社など、多くの関連神社が周辺に点在しており、それぞれに由緒と歴史があります。代表的なものとしては、齋殿神社、伊和志豆神社、名次神社、岡田神社、南宮などがあります。末社としては、五末社（八坂神社・子安神社・春日神社・地神社・稲荷神社）、松尾神社、若宮神社、六甲山神社、塞神社、稲荷神社、児社、須佐之男神社、愛宕神社、武甕槌神社、風神社などがあります。

文化財とその他

境内のコバノミツバツツジ群落は、兵庫県指定天然記念物に指定されています。また、阪神タイガースが毎年キャンプイン前に必勝祈願を行うことでも有名です。神功皇后の帰還伝説にまつわる夏祭御神幸は、戦国時代まで行われていたと伝えられています。

廣田神社は、歴史、神話、自然が融合した、西宮を代表する聖地と言えるでしょう。その神聖な雰囲気と悠久の歴史に触れることで、日本の文化と精神性を深く感じることができる場所です。

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