長田神社

長田神社：神戸の地に息づく歴史と信仰

兵庫県神戸市長田区に鎮座する長田神社は、悠久の歴史と深い信仰に彩られた神社です。式内社（名神大社）であり、かつては官幣中社に列せられた格式高い社として知られています。廣田神社、生田神社とともに、神功皇后ゆかりの社として、神戸を代表する神社の一つに数えられています。

主祭神と境内

長田神社の主祭神は事代主神です。本殿瑞垣内には、天照大御神と応神天皇も祀られています。事代主神は、海運や商業の神として信仰を集め、古くから人々の暮らしを見守ってきた神様と言えるでしょう。境内には、国指定重要文化財である黒漆金銅装神輿をはじめ、歴史を感じさせる数々の建造物や神宝が大切に保管されています。かつては数百羽もの鶏が飼育され、「チキンテンプル」と呼ばれた時期もあったそうです。現在では鳩が放されており、静寂の中に神聖な空気が漂っています。

創祀と歴史

『日本書紀』によると、神功皇后が三韓征伐から帰還する際に、武庫の門で船が進まなくなったことから、神託によってこの地に創祀されたと伝えられています。201年の創祀から現在まで、1800年以上の歴史を誇り、その間、長田社、長田宮、長田大明神、摂津本宮長田大明神など、様々な名称で呼ばれてきました。

延喜式神名帳にも名神大社として記載され、祈雨の神としても信仰を集めていました。また、『新抄格勅符抄』には、神戸（かんべ）41戸が社を護持していたことが記されており、現在の「神戸」という地名は、この神戸職に由来すると言われています。

明治時代には県社に列せられ、明治天皇の西国巡幸を機に官幣小社、更に官幣中社へと昇格しました。これは、神戸市内の生田神社と同様の経緯を辿ったと言えるでしょう。

1995年の阪神・淡路大震災では大きな被害を受けましたが、氏子らの尽力により、本殿は倒壊を免れ、その後、平成12年には復旧を果たしました。震災時は、参集殿が避難所として機能したという記録も残っています。

御船山旧跡と周辺

神社境内周辺には、御船山旧跡と呼ばれる場所があります。伝承によれば、神功皇后が御船具を埋めた場所とされ、黄金の船が埋まっているという伝説が残っています。近隣の町名「御船通」もこの伝説に由来しています。

長田神社へのアクセスは、阪神神戸高速線高速長田駅から徒歩約600m、神戸市営地下鉄長田駅から徒歩約500mです。神戸駅や兵庫駅からバスを利用することも可能です。地下鉄の長田駅や高速長田駅では、「長田（長田神社前）」と案内されています。

周辺には、長福寺などの歴史的建造物も存在し、歴史散歩にも最適な場所となっています。

長田神社の文化と信仰

長田神社は、単なる宗教施設としてだけでなく、地域文化の中核を担ってきました。かつては、氏子に鶏肉や卵を食べない習慣があり、婦女の歯を鶏の羽根で染める風習もあったと伝えられています。また、文久2年刊行の『雲錦随筆』には、長田神社の追儺式神事（鬼追い）の様子が描かれています。これらの伝統や風習は、長田神社が地域社会と深く結びついていたことを物語っています。明治時代末期まで約1000年にわたり、大中家が代々神職を務めたという歴史も、神社の安定した発展を物語るものと言えるでしょう。

長田神社は、歴史と信仰、そして地域社会の繋がりを象徴する、神戸の重要な文化的遺産と言えるでしょう。

もう一度検索