建内記

建内記（けんないき）

『建内記』は、室町時代における重要な日記であり、その著者は公卿・万里小路時房です。この日記は1414年から1455年にわたって書かれましたが、現存する部分は断片的です。特に永享元年（1429年）、永享13年（1441年）、嘉吉年間、文安年間に書かれた部分が中心となっています。著者自身の書状の裏面や、届いた書状にも日記が記されています。

著者の時房は、南都伝奏や勧修寺氏の長者などの職を担っており、幕府との密接な関係を持っていました。これにより、彼の日記には、伝奏、氏長者としての活動や幕府、公武関係の動向に関する詳細な記録が豊富に含まれています。特に、将軍足利義教の急死を引き起こした嘉吉の乱や、その後の徳政一揆についての記述は非常に貴重です。

また、万里小路家が所有していた荘園が年貢滞納により武士や商人、僧侶に代官請に移行する過程も記録されており、これは室町時代の社会経済についての有益な情報源となっています。このような内容は、公家の日記の中でも特異であり、室町中期の社会経済史研究にとって重要な事例です。

時房の死後、この日記は彼の息子である冬房、また甘露寺家から養子に入った春房、さらに勧修寺家から養子に入った賢房に引き継がれました。その後、賢房の実父である勧修寺教秀が所有することとなり、延徳元年（1489年）の中御門宣胤の日記から、この時点で教秀が『建内記』を所有していたことが確認されています。

その後の日記の伝来については記録が不明ですが、過程で散逸や欠落があったと考えられています。最終的には伏見宮や菊亭家に渡ったとされます。現存する自筆の原本は、宮内庁書陵部に存在する伏見宮本三十七巻、京都大学図書館の菊亭家本十三巻、京都大学文学部に三巻、日野角坊文庫に三巻があります。

『建内記』は、その独特な視点から当時の日本の社会状況を色鮮やかに描写しており、今後の歴史研究においても欠かせない資料として評価されています。室町時代の日記文学の中でも、時房の洞察力や視点が際立っていることから、広く読まれ続けることでしょう。

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