建武年中行事

『建武年中行事』について

『建武年中行事』とは、後醍醐天皇が作成した有職故実に関する書物で、全3巻から成り立っています。この書物は、建武元年（1334年）に成立したとされる一方で、天皇が吉野へ逃れた際の延元2年（1337年）に成立したとの説も存在します。このような複数の成立時期が存在する中で、多くの異称も持ち、およそ700年の間にわたって尊重されてきた重要な文献です。

概要

後醍醐天皇は、約20年の間宮中での経験をもとに、この書物を編纂しました。書中には、朝儀や公事についての詳細な内容やその作法が記されています。特に、建武の新政を開始するにあたって、朝儀の再興を目指して執筆されたと考えられています。内容は、正月の四方拝から年末の追儺や節折に至るまで、月ごとに分類されており、皇室の独自行事に関する記載も豊富です。

また、この書物は南朝と敵対した北朝においても高く評価され、後の歴史において大きな影響を与えました。例として、後花園天皇がこの書をもとに行事の復興を試みたことが挙げられます。1428年から1464年にかけて在位した後花園天皇は、自らこの文献を写経し、その注釈を付けることで歴史的行事を復興させようとしました。彼の息子である後土御門天皇もその意向を引き継ぎ、さらなる行事の復活につなげたのです。

歴史的な影響

『建武年中行事』は、その成立から後の世代にわたって、多くの天皇や学者たちに拠り所とされました。後水尾天皇（在位1611年 - 1629年）もこの書の価値を見出し、順徳天皇の『禁秘抄』と肩を並べる重要な文献と称賛しました。これにより、後水尾天皇は自らの著作『後水尾院年中行事』の基礎とし、行事の復興を目指しました。こうした動きは、後世にわたって伝統を紡ぐための重要な役割を果たしたのです。

出版文献

この文献に関して、和田英松が著した注解本『建武年中行事』が広く知られており、1989年に講談社学術文庫から刊行されました。再版も1991年に行われ、多くの読者に親しまれています。

参考文献

入手可能な文献として、後醍醐天皇と和田英松による註解『修訂 建武年中行事略解』があり、1930年に明治書院から出版されました。これまでの研究や再評価の流れの中で、『建武年中行事』は日本の文化や歴史を知る上で欠かせない資料として位置づけられています。

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