建比良鳥命

建比良鳥命（タケヒラトリ）

概要

建比良鳥命は、日本神話に登場する神であり、『古事記』では建比良鳥命、『日本書紀』では大背飯三熊之大人（オオソビノミクマノウシ）や武三熊之大人（タケミクマノウシ）、武日照命（タケヒナテル）、武夷鳥（タケヒナトリ）、天夷鳥（アマノヒナトリ）など、複数の異名で記されています。

これらの異名の同定は、出雲大社の祭祀を継承する千家家が伝える系譜書『出雲國造傳統略』に基づいています。この書物によれば、これらの異名を持つ神々は同一の神格であるとされています。

建比良鳥命の名前の意味は、「建」が「勇猛な」を、「比良」が「縁（へり）」、つまり物の端や境界を意味すると解釈され、「勇猛な、異郷への境界を飛ぶ鳥」と解釈できます。この「比良」は、黄泉比良坂の「比良」や山城の幣羅坂の「幣羅」など、境界を示す言葉と共通しています。また、鳥が人間の霊魂を異郷に運ぶという信仰に基づき、出雲国との境界を意味すると考えられます。

別名の天夷鳥命は、「高天原から夷（ひな＝出雲国）へ飛び下った鳥」を意味し、建比良鳥命と同一の神格であることが示唆されます。

記述

『古事記』では、天照大御神と須佐之男命の誓約の段において、天之菩卑能命の子が建比良鳥命であり、出雲国造、无邪志国造、上菟上国造、下菟上国造、伊自牟国造、津島県直、遠江国造などの祖神とされています。

『日本書紀』では、葦原中国平定の段で、大背飯三熊之大人（または武三熊之大人）が父である天穂日命に次いで派遣されますが、父と同様に報告を行いませんでした。また、崇神天皇60年7月には、天皇が「武日照命（武夷鳥、天夷鳥とも）が天から持ってきた神宝が出雲大社に納められているので、それを見たい」と要求し、その結果、出雲氏の内紛が発生し、当時の当主である出雲振根が誅殺される事件が発生したと記されています。

『日本文徳天皇実録』には、天安二年三月二十二日条に「在河内國天夷鳥命神授従五位下」とあり、現在の道明寺天満宮に祀られている天夷鳥命に従五位下が授けられたと考えられます。

『延喜式』巻八の「出雲国造神賀詞」には、「天夷鳥命に布都怒志命を副へて天降し」という記述があります。

系譜

『古事記』や『日本書紀』によれば、建比良鳥命は天照大御神の五男子の一柱である天之菩卑能命の子とされています。出雲国造の系図では、次代を伊佐我命（櫛瓊命）としています。

祀る神社

建比良鳥命は、以下の神社で祀られています。

鷲宮神社（埼玉県久喜市）
比奈多乃神社（静岡県掛川市）
元宮土師社（大阪府藤井寺市・道明寺天満宮境内）

関連項目

キヒサツミ - 『古事記』垂仁天皇条で出雲国造の祖とされる。

外部リンク

建比良鳥命 – 國學院大學 古典文化学事業
鷲宮神社　神社由緒　関東最古の大社・お酉様の本社
比奈多乃神社 - 静岡県神社庁
道明寺天満宮　元宮　土師社

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