日本文徳天皇実録

日本文徳天皇実録（にほんもんとくてんのうじつろく）

『日本文徳天皇実録』は、平安時代に編纂された歴史書であり、六国史の第五にあたります。この書は、文徳天皇の治世である嘉祥3年（850年）から天安2年（858年）までの8年間を扱っており、略して「文徳実録」とも呼ばれます。編年体で漢文で書かれており、全10巻で構成されています。

編纂

序文によると、本書の編纂は清和天皇の勅命により、貞観13年（871年）に藤原基経、南淵年名、都良香、大江音人らに命じられました。しかし、年名と音人（共に877年没）が亡くなったため、元慶2年（878年）に菅原是善が加えられ、基経、良香との3人で編纂作業が進められました。そして、翌元慶3年（879年）11月に完成しました。また、『菅家文草』によれば、菅原是善の子である道真が、父に代わって序文を執筆したとされています。

書名

日本の正史は、それまで「紀」という名称が用いられていましたが、中国の歴史書では、王朝が倒れた後に次の王朝が前代の歴史をまとめる形式で作られていました。一方、「実録」は、皇帝一代ごとの事績を記録したものでした。日本の正史は、『日本書紀』を除き、『続日本紀』以降は「一つの王朝の歴代君主の統治記録」としての性格が強くなっていました。このような流れの中で、『文徳実録』が「実録」という書名を採用したことは、日本の史書が中国の実録を模倣するようになったことの表れであると考えられています。

内容

六国史の中で最も期間が短いのが特徴です。政治関係の記述が少なく、下級貴族の人物伝が多いことも特徴の一つです。これは、従来の国史が官人の卒伝を四位までとしていたのに対し、『文徳実録』では五位まで拡大したことによるものです。また、本書は「弘仁文化」から「貞観文化」への過渡期を詳細に記述しており、六国史の中でも人間味あふれる伝記が多く収録されています。

参考文献

『新訂増補 国史大系3 日本文徳天皇実録』黒板勝美編、吉川弘文館
坂本太郎『六国史』 吉川弘文館、1970年、新装版1994年
笹山晴生「続日本紀と古代の史書」- 新日本古典文学大系『続日本紀一』所収、岩波書店、1989年

外部リンク

「日本文徳天皇実録」朝日新聞本 （「J－TEXTS 日本文学電子図書館」から「菊池真一研究室」にページ移行）

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