建福寺

建福寺の歴史

建福寺は、長野県伊那市高遠町に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。その起源は古く、伝承によれば、平安時代末期の僧侶である文覚上人（1139年～1203年）が、独鈷池付近に寺を開いたとされています。

鎌倉時代に入ると、康元元年（1256年）には、中国から渡来した禅僧である蘭渓道隆（大覚禅師）がこの地を訪れ、鉾持山乾福興国禅寺（ほこじさんけんぷくこうこくぜんじ）として寺を興しました。これにより、建福寺は禅宗寺院としての基盤を築きました。

その後、戦国時代には武田信玄が寺に帰依し、静岡市の臨済寺から東谷宗杲禅師を招いて中興開山としました。これにより、建福寺は妙心寺派に改められました。江戸時代には、貞享2年（1685年）に喝道和尚が中興し、明和3年（1765年）には火災で焼失しましたが、安永4年（1775年）に少山和尚によって再建されました。しかし、嘉永4年（1851年）には再び焼失し、安政3年（1856年）に現在の姿に再建されました。

また、武田勝頼が高遠城主であった時代には、武田家の菩提所となり、勝頼の母である諏訪御料人が埋葬され、乾福院殿と呼ばれました。さらに、次の藩主である保科氏も菩提寺とし、寺号を大寶山建福寺と改めました。

寛永13年（1636年）には、保科正之が会津若松藩主として移封される際に、鉄舟和尚が随行し、会津にも建福寺（会津若松市）が創建されました。これにより、建福寺は会津にもその名を残すこととなりました。

文化財

建福寺には、歴史的価値の高い文化財が数多く残されています。

重要文化財（国指定）

紙本墨画観音竜虎図

江戸時代初期の画家である狩野興以筆の墨絵で、国の重要文化財に指定されています。正式な指定名称は「紙本墨画中観音左右竜虎図」です。三幅対で構成されており、中央に白衣観音、その左右に龍と虎が描かれています。一幅の大きさは縦167.3cm、幅106.1cmです。大正12年（1923年）3月28日に重要文化財に指定されました。

その他の文化財

建福寺の石仏群

本堂への階段の両側と境内には、江戸時代の高遠石工によって作られた45体の石仏が安置されています。これらの石仏は、西国三十三観音、延命地蔵、願王地蔵、六地蔵、不動明王、楊柳観音、法陀羅山地蔵、仏足石などで構成されており、高遠石工の技術の高さを物語っています。

保科家との関係

保科氏は、二代将軍の子である保科正之を養子とし、正之が会津若松城主に栄転した際には、勉学の師であった第五世鉄船和尚が共に会津へ赴き、会津にも建福寺を創建しました。当時は、群下に末寺八ヶ寺を有するほど繁栄しました。

参考文献

『上伊那郡史』　昭和48年6月7日　中村安孝
『高遠町誌　上　歴史　二』　昭和58年3月30日　高遠町誌刊行会
『高遠町誌　下　自然・現代・民俗』　昭和54年7月10日　高遠町誌刊行会
『伊那市ふるさと百科　あすの暮らしを育む文化百科』平成19年1月1日　株式会社新葉社
『上伊那の寺院　上伊那仏教会編』　平成九年八月一日　上伊那仏教会
『探訪 信州の古寺 禅宗』1996年 郷土出版社

関連項目

高遠石工

外部リンク

建福寺 - 長野伊那谷観光局
* 建福寺「高遠石工」石仏巡礼の聖地 - 高遠石工研究センター

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