建部池田家

建部池田家：岡山藩家老から華族へ至る軌跡

建部池田家は、近世から近代にかけて岡山藩に仕えた名家で、その歴史は森寺氏から始まります。当初は伊勢国赤堀城主であった森寺氏は、織田氏を経て池田恒興に仕え、重臣として7000石を領しました。池田恒興の孫、長貞が家督を継ぎましたが、早世したため、弟の長政が家督を継承。この際に池田姓を称するようになり、「森寺池田家」と呼ばれるようになりました。

1632年、池田氏が岡山藩に再入封すると、建部池田家は建部地域に陣屋を構え、家老として1万4000石を領する有力な家となりました。しかし、長尚の代に1万石に減封されています。

幕末から明治維新にかけて当主を務めたのは池田博文とその養子である池田博愛です。博文は慶応2年（1866年）に隠居し、家督を博愛に譲りました。博愛は維新後、岡山藩大参事を務め、戊辰戦争では姫路や常陸に出兵するなど活躍しました。

維新後、建部池田家は当初士族に列せられました。明治17年（1884年）の華族令制定にあたり、当初は旧万石以上の陪臣が男爵に叙される予定でしたが、最終的には叙爵対象外となり、建部池田家は士族のままとなりました。

明治33年、旧藩主一門や旧万石以上陪臣家の授爵が審議されましたが、建部池田家は「旧禄高壱万石以上判明せしも五百円以上の収入を生ずべき財本を有せざる家」に分類され、授爵を見送られました。

その後、明治35年、宗家の池田章政侯爵が博愛の叙爵を宮内省に請願。建部池田家の由緒や維新時の功績を訴えましたが、500円以上の資産が確認できなかったため、授爵には至りませんでした。

しかし、明治39年、有吉家、金川日置家、伊木家などと共に、池田博愛の男爵への叙爵が建議されました。500円以上の資産を有すると認められ、同年9月17日、ついに華族の男爵に叙せられたのです。

二代男爵博知の代には、建部池田家の住まいは岐阜県海津郡今尾町にありました。このように、建部池田家は森寺氏から池田氏へと変遷し、岡山藩家老としての地位を築き、明治時代には華族に列するなど、数々の変遷を遂げた歴史を持つ家系です。その繁栄と苦難の歴史は、近代日本の社会構造の変化を反映していると言えるでしょう。

脚注

出典

華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年（平成2年）。ISBN 978-4820540342。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年（平成27年）。ISBN 978-4642014724。
* 森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年（平成24年）。ISBN 978-4490108217。

もう一度検索