弓裔

弓裔（きゅうえい）について

弓裔（きゅうえい）は後高句麗の建国者であり、後三国時代における重要な人物の一人です。彼は金という姓を持ち、僧号は善宗といいます。特に、彼が隻眼であったため「一目大王」とも呼ばれました。その生涯を通じて、弓裔は専制的な統治と豪族たちとの対立に立ち向かい、918年には有力な部下である王建に追放されます。このことから、弓裔には諡号が付けられていません。

生涯と出生

弓裔の出自については、『三国史記』に記載があります。彼は新羅の第47代国王憲安王か、第48代の景文王の庶子として生まれました。出生時、占い師は赤ん坊の弓裔を不吉とみなし、殺害するよう王に助言しました。しかし、衛兵は幼い彼を殺すことができず、宮殿の下に投げ捨てました。運良く彼を助けた乳母は、逃げ延びながら弓裔を育てますが、その際に彼は隻眼になってしまいました。

乳母は弓裔が10歳になる頃、出生の秘密を打ち明け、「あなたは王室の子であり、命をかけて育てたのに心配をかけている」と告げました。これにより弓裔は自らの運命を自覚し、母にも心配をかけないと誓い、家を出ていきました。

歴史的背景と建国の道

出生にまつわる解釈はさまざまにあり、学界では憲安王の庶子という意見に疑問を持つ声もあります。弓裔は庶子として見捨てられ、民間で育ったため、王室への反感を抱くことになりました。

彼は世達寺に入って僧侶としての生活を始めますが、自分が王族であることを忘れられず、現実に目を向けるようになります。ある日、托鉢の際に得た象牙の札が彼に王となる野望を抱かせる契機となりました。

新羅は当時、中央政府の統制が失われ、豪族の反乱が頻発していました。891年から892年にかけて、弓裔は盗賊の一員として活動を始め、その後独自の勢力を形成することに成功します。

893年には多くの地域を制圧し、兵力を集めることで中央平原に進出。894年には溟州を制圧し、大規模な部隊を編成しました。この過程で、彼は公平に戦利品を分配し、民衆の支持を受け、人望を集めました。

後高句麗の成立とその拡大

901年、弓裔は後高句麗を建国し、自ら王を名乗ります。彼の治世のもと、後高句麗は後百済や新羅と並び立つ存在となります。弓裔は904年に国号を摩震と改め、さらに906年には後百済軍に勝利を収め、次第にその勢力を拡大させていきました。

しかし、弓裔の政権は次第に暴政へと傾きます。915年、彼の家族や忠臣たちが彼の横暴に苦しみ、最終的には918年に部下たちによって王建が擁立され、弓裔は追放される事態に至ります。逃亡する途中の彼は農民に発見され、命を落とすことになります。

家族

• - 王后康氏：弓裔によってその命を奪われました。
• - 子女：青光菩薩、神光菩薩はいずれも弓裔により命を奪われます。

弓裔の生涯は、王族としての出自を持ちながらも、民間で成長し、乱世の中で名を馳せた波乱に満ちたものでした。歴史の中で彼の存在は後高句麗の建立に大きな影響を与えましたが、最終的にはその暴政によって彼自身の運命をも左右することとなりました。

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