引田港

引田港（ひけたこう）

香川県東かがわ市の引田地区に位置する引田港は、香川県が管理する地方港湾です。瀬戸内海の播磨灘に面し、古くから海上交通の要衝として重要な役割を担ってきました。

歴史的な変遷

引田港の歴史は古く、中世にはすでに播磨灘を往来する船が風待ちをするための港として利用されていました。周辺には引田城が築かれ、その城下町として発展する中で、港は地域の玄関口として栄えました。近世に入ると、引田は日用品の集散地となり、特に地場産業として盛んになった醤油の積出港として大きな賑わいを見せました。多くの船がこの港から各地へ醤油を運び出し、地域の経済を支えました。

しかし、近代になると醤油の大量生産化が進み、主要な生産地が変化したことに伴い、引田港はかつての積出港としての地位を徐々に失っていきます。厳しい時代を経て、戦後まもなく地方港湾に指定された引田港は、その役割を転換させました。以降は、漁港としての機能に加え、プレジャーボートや小型船舶の係留地としても活用され、新たな形で港としての賑わいを取り戻していきました。

近年、引田港は二つの点で再び脚光を浴びています。一つは、世界で初めてハマチの養殖に成功した場所として知られていることです。この画期的な成功は、日本の水産業に大きな影響を与えました。もう一つは、港周辺に残る近代以前の古い町並みが保存・再生されていることです。歴史的な建物が大切に守られ、往時の風情を今に伝えており、多くの観光客が訪れるようになりました。

現代の引田港

現在、引田港は漁業活動の拠点であると同時に、レジャーの港としても親しまれています。特に釣り人にとってはよく知られた名所であり、隣接する引田漁港と並んで、休日には多くの釣り客で賑わいます。港内にある物揚場には、町が運営する温泉入浴施設が設けられており、漁業者や観光客が気軽に立ち寄れる憩いの場となっています。

また、引田港周辺では毎年7月中旬に「風の港まつり」が開催されます。これは、港の歴史や文化を祝い、地域住民や来訪者が一体となって楽しむことができる恒例行事となっています。

アクセスと周辺情報

引田港は公共交通機関でもアクセスしやすい場所にあります。JR高徳線の引田駅から徒歩約10分の距離です。高速バスを利用する場合は、引田バス停から徒歩約25分となります。

港の周辺には、魅力的なスポットが数多く点在しています。特に歴史的な引田の街並みは見どころ豊富で、国の登録有形文化財にも指定されている「かめびし屋」や「讃州井筒屋敷」、さらには「山本家住宅」「松村家住宅」「泉家住宅」「長崎家住宅」「日下家住宅」といった趣のある古民家が軒を連ねています。かつての姿を伝える「旧引田郵便局（風の港館）」も歴史を感じさせる建物です。また、この地域を守る「誉田八幡神社」も近くに位置しています。甘い香りを漂わせる和三盆の老舗「ばいこう堂本店」も徒歩圏内にあり、お土産選びに立ち寄るのもおすすめです。

引田港へと通じる香川県道123号線は、この港の重要性を示すかのように「引田港線」と名付けられています。

このように、引田港は長い歴史の中でその役割を変化させながらも、常に地域の中心であり続けてきました。古の風待ち港から、現代の漁業やレジャー、そして歴史と文化を感じさせる観光の拠点へと姿を変え、多くの人々に利用され、親しまれています。

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