弘乳舎

株式会社弘乳舎

企業概要

株式会社弘乳舎は、日本の九州地方、熊本県熊本市に本社を構える乳製品メーカーです。牛乳や乳製品の製造・販売を主な事業としており、地域に根差した企業活動を展開しています。

沿革と歴史

弘乳舎の歴史は古く、その源流は1883年（明治16年）に遡ります。この年、高木第四郎氏が熊本市鷹匠町に「高木弘乳舎」という名称で牧場と牛乳を扱う会社を創業しました。これが現在の弘乳舎につながる礎の一つとなります。

しかし、高木弘乳舎は1941年（昭和16年）に他の牛乳会社と統合され、熊本合同牛乳（現在の熊本森永乳業）の一部となり、独立した存在としては消滅します。その後、1945年（昭和20年）に光永立身氏が熊本市新屋敷の地で改めて「弘乳舎」を創業しました。この年が、現在の法人における実質的な創業年と位置付けられています。

法人としての設立は1956年（昭和31年）に行われ、組織基盤を強化しました。1970年（昭和45年）には本社を現在の所在地に移転し、事業拡大を進めます。

事業の多角化としては、1972年（昭和47年）に清涼飲料水である「三菱サイダー」の製造販売を開始したことが挙げられます。この製品は後述する特異な経緯を持つことになりますが、長らく同社の製品ラインナップの一つでした。

21世紀に入ると、弘乳舎の経営体制に変化が現れます。2007年（平成19年）には健康ホールディングスが弘乳舎の全株式を取得し、同社の連結子会社となりました。続いて2010年（平成22年）には、全国農業協同組合連合会（JA全農）と九州生乳販売農業協同組合連合会が第三者割当増資を引き受ける形で資本参加し、経営への関与を深めました。

さらに、2013年9月9日には、健康コーポレーション（健康ホールディングス）から株式会社アスラポート・ダイニング（現在のJFLAホールディングス）へ株式の大半（全株式の93.44%）が譲渡され、弘乳舎はJFLAホールディングスの連結子会社となりました。

事業面では、かつて製造販売していた「三菱サイダー」が、2017年（平成29年）5月31日をもって製造販売を終了しました。

社名の由来

「弘乳舎」という社名は、1883年（明治16年）に高木第四郎氏（後の帝国牛乳協会会長なども歴任）が創業した「高木弘乳舎」に由来しています。前述の通り、高木弘乳舎は他の会社との統合により一旦消滅しましたが、1945年（昭和20年）に弘乳舎を創業した光永立身氏が、高木第四郎氏から「弘乳舎」の商号を譲り受けたことで、その名が現代に引き継がれることとなりました。

三菱サイダーについて

弘乳舎がかつて製造販売していた「三菱サイダー」は、「三菱」という商標とスリーダイヤモンドのロゴを使用していましたが、これは一般的に知られる三菱電機や三菱自動車工業などが所属する三菱グループ（旧三菱財閥）とは直接の関係がない製品でした。

この「三菱」の商標は、1919年に松田工業（現在のマツダトータルソリューションズ）が登録したもので、弘乳舎は同社からの委託を受けて製造・販売を行っていたのです。これは、三菱鉛筆が三菱グループ外でありながら同様に「三菱」の商標を使用していた例と同質と言えます。

しかし、この商標権は2014年に松田工業から三菱商事へ譲渡されました。これに伴い、弘乳舎での「三菱サイダー」の製造販売は2017年5月31日をもって終了となりました。

かつての子会社 ASOジャパン

福岡市博多区に本社を置く「ASOジャパン」は、かつて弘乳舎の子会社でした。この分離には特別な経緯があります。

2007年7月に健康ホールディングスが弘乳舎の全株式を取得し連結子会社とした2ヶ月後の同年9月、当時の弘乳舎取締役であった光永久仁子氏が、弘乳舎が保有していた福岡弘乳舎、北九州弘乳舎、弘乳舎熊本販売の3社の株式を弘乳舎から買い取り、独立した事業体として運営を始めました。

ASOジャパンは、主にアイスクリームの企画販売や乳製品などの卸売業を手掛けており、アイスクリームの製造の一部は現在も弘乳舎に委託しています。このように、かつて親子関係にあった両社は、独立後も事業上の繋がりを維持しています。

株式会社弘乳舎は、100年以上の歴史を持つ中で、設立経緯、経営体制、製品ラインナップなど、様々な変遷を経て現在に至る、ユニークな歴史を持つ企業と言えます。

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