弘治帝

弘治帝（こうちてい）

弘治帝は、明朝の第10代皇帝であり、廟号は孝宗（こうそう）、諱は祐樘（ゆうとう）である。日本では、その治世の元号から一般的に弘治帝として知られている。彼は、明朝の中興の祖とも称され、その治世は政治的安定と経済発展をもたらした。

生涯

弘治帝は、成化帝の三男として生まれた。彼の生母である淑妃紀氏は、広西省の少数民族ヤオ族の出身で、反乱鎮圧の際に捕虜となり、宮廷に献上された。当時の後宮は、成化帝の寵妃である万貴妃の強い影響下にあり、彼女は他の妃の妊娠を許さず、胎児を堕胎させていた。弘治帝もまた、そのような状況下で密かに育てられた。宦官たちの助けにより、彼は無事に成長したが、皇太子時代には幾度も廃位の危機に直面した。最終的には、父である成化帝が泰山地震を恐れて思いとどまり、皇太子の地位を維持することができた。

即位後、弘治帝はまず、父帝が重用していた道士や僧侶を追放した。彼らは、朝政に貢献することなく高禄を得ていたため、その追放は公正な政治を行う上での第一歩であった。道士の李孜省や僧の継暁は投獄され、後に死罪となった。弘治帝は賢臣を積極的に登用し、専売法の見直し、宦官・道士・僧の綱紀粛正、北方のダヤン・ハーンに対する防衛体制の強化などの政策を実施した。これらの政策は、弛緩していた明朝の国勢を立て直す上で重要な役割を果たした。彼は、一時的に不老長寿を説く宦官を信任したこともあったが、その弊害に気づくとすぐに粛清し、再び政務に励んだ。これにより、後世の史家からは明中興の祖と称されている。

弘治18年（1505年）、弘治帝は36歳で崩御した。彼は風邪を患った際、太医が誤った処方を行い、虎狼の薬を使用してしまったことが原因で鼻血が止まらず、容態が急変し亡くなったという。彼は、大臣たちに一人息子の東宮の面倒を託し、泰陵（明の十三陵の一つ）に、唯一の后妃である張皇后とともに合葬された。

宗室

正室：孝康敬皇后張氏
長男：正徳帝 朱厚㷖 - 第11代皇帝
次男：蔚悼王 朱厚煒 - 早世
長女：太康公主 朱秀栄 - 早世

登場作品

漫画

滝口琳々『新☆再生縁〜明王朝宮廷物語』

テレビドラマ

『明朝皇伝 〜大王への道〜』（2018年、中国、演：劉奕君）
* 『成化十四年〜都に咲く秘密〜』（2020年、中国、演：劉世傑）


弘治帝の治世は、明朝の歴史において重要な転換期であった。彼の賢明な政治と改革への取り組みは、その後の明朝の発展に大きく貢献した。

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