弘法山古墳

弘法山古墳について

弘法山古墳は、長野県松本市並柳に位置する、標高約650mの弘法山山頂に築かれた古墳です。墳丘長66mの前方後方墳であり、東日本において最古級の古墳の一つとされています。築造時期は3世紀末から4世紀中葉頃と推定され、西日本における古墳出現期・発生期とほぼ同時期にあたります。この古墳は、当時の社会構造や文化交流を考察する上で貴重な資料を提供しています。

構造

墳丘は、後方部が幅33m、高さ6m、前方部が幅22m、高さ2mで、部分的に葺き石が認められますが、埴輪や周濠は確認されていません。埋葬施設は、墳丘の長軸と直交する竪穴式石室状の礫槨で、河原石が積み上げられています。この礫槨は、長さ5.5m、幅1.3m、高さ0.9mの箱形の木棺を納めるために造られたと考えられています。

出土品

礫槨内からは、四獣文鏡（「上方作鏡」銘）、銅鏃1、鉄剣3、勾玉、ガラス小玉738、鉄斧1、鉄鏃24、S字状口縁台付甕などの貴重な遺物が出土しています。これらの出土品は、松本市立考古博物館に展示されており、当時の文化や技術を知る上で重要な手がかりとなっています。

葬送儀礼

棺の外側からは、壺（底部穿孔）、高坏、手あぶり型土器などが発見されており、葬送儀礼が行われたことを示唆しています。これらの土器は、濃尾平野の元屋敷式土器に類似しており、畿内地方の庄内式または布留式の土器にも相当すると考えられています。このことから、古墳の被葬者が濃尾平野の勢力と関係があった可能性が指摘されています。

前方後方墳の成立

前方後方墳は、弥生時代後期に東海地方西部の濃尾平野に見られる前方後方形の方形周溝墓が起源であるとする説があります。この地域は、『魏志倭人伝』に登場する狗奴国の勢力圏であった可能性も指摘されており、弘法山古墳の被葬者がこの地域の首長であった可能性も考えられます。しかし、前方後方墳の最大規模のものが畿内に存在することや、狗奴国の所在地について別の説も存在するため、断定はできません。

その後の歴史

弘法山古墳の被葬者とその子孫については、詳しいことは分かっていませんが、比較的近い場所に勢力を持っていた古代氏族として、洲羽国造（諏訪氏）が挙げられます。

現在の弘法山古墳

現在、弘法山古墳にはソメイヨシノやヤエザクラなど約2,000本の桜が植えられており、春には多くの花見客で賑わう桜の名所となっています。また、松本市街を一望できる立地から、テレビ番組で紹介されることも多く、市民に親しまれています。

文化財指定

弘法山古墳は、その歴史的価値から、1976年2月20日に国の史跡に指定されました。また、出土品は1993年8月12日に長野県宝（有形文化財）に指定され、松本市立考古博物館で保管されています。

アクセス

弘法山古墳へのアクセスは、JR南松本駅から徒歩約30分、またはJR松本駅前の松本バスターミナルからアルピコ交通バスで約15分、弘法山入口下車、徒歩約10分です。また、松本インターチェンジ、塩尻北インターチェンジからは車で約20分です。

まとめ

弘法山古墳は、東日本における初期の古墳文化を理解する上で非常に重要な遺跡です。その特異な形状や出土品、そして桜の名所としての側面を持ち合わせており、訪れる人々に歴史と自然の魅力を提供しています。

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