弘道館戦争

弘道館戦争（こうどうかんせんそう）

弘道館戦争は、明治元年10月1日（1868年11月14日）に、水戸藩の藩校であった弘道館（現在の水戸市）で発生した内戦です。この戦いは、水戸藩内の保守派である諸生党と、過激派である天狗党の残党を中心とした勢力との間で繰り広げられました。

背景

幕末の動乱期、水戸藩では尊王攘夷を唱える天狗党が勢力を拡大しましたが、元治元年（1864年）の天狗党の乱で鎮圧されました。その後、市川三左衛門率いる保守派の諸生党が藩の実権を掌握します。しかし、戊辰戦争が勃発すると、朝廷は諸生党を追討する命令を発令し、これにより情勢は一変します。

天狗党の残党や本圀寺党などの過激派が水戸に戻り勢力を盛り返します。一方、諸生党は藩を脱出し、会津藩へ向かいます。会津藩や桑名藩と合流し、新政府軍との戦闘に参加しますが、会津藩は9月22日（11月6日）に降伏。市川三左衛門率いる諸生党は、他の敗残兵と合流し、手薄になった水戸を目指します。その数はおよそ500名から1,000名と伝えられています。

彼らは途中の片府田や佐良土で大田原藩や黒羽藩の兵と交戦しながら、9月29日（11月13日）に水戸城下に到達しました。

戦闘の経過

水戸城では、家老の山野辺義芸らが諸生党軍の接近を知り、周辺から兵力を集結させていました。そのため、諸生党は水戸城への入城を阻まれ、水戸城三の丸にあった弘道館を占拠します。弘道館の責任者であった青山延寿は、弘道館へ向かおうとしましたが、諸生党によって阻まれました。

10月1日（11月14日）、反諸生党派は弘道館への攻撃を開始。激しい銃撃戦が繰り広げられました。反諸生党派は、鮎沢伊太夫など87名の戦死者を出すものの、戦闘を有利に進めます。一方、諸生党は約90名の戦死者と多数の負傷者を出し、翌10月2日（11月15日）の夜に水戸を脱出しました。

この戦いによって、弘道館は正門、正庁、至善堂を除いて焼失し、城内の建物だけでなく、多くの貴重な蔵書も失われました。現在でも、弘道館の正門や正庁玄関には、当時の弾痕が残っています。

戦後

水戸を脱出した諸生党は、反諸生党派と新政府軍による追撃を受け、多くの脱落者を出しながら敗走を続けました。そして、10月6日（11月19日）に下総八日市場（現在の千葉県匝瑳市）で行われた松山戦争で壊滅しました。

弘道館戦争は、水戸藩における内戦であると同時に、戊辰戦争の一環として位置づけられます。この戦いによって、水戸藩は大きな被害を受け、多くの人材を失うこととなりました。

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