青山延寿

青山延寿：水戸藩の儒学者、激動の時代を生き抜いた人物

青山延寿（あおやま のぶとし）は、文政3年（1820年）に水戸藩士の家に生まれ、明治39年（1906年）に生涯を閉じました。儒学者、史学者として藩に貢献し、弘道館の教授頭取代理や彰考館権総裁代役といった要職を歴任しました。字は季卿、通称は量四郎、鉄槍・鉄槍斎と号しました。また、婦人運動家として知られる山川菊栄の外祖父としても知られています。

生涯

延寿は、水戸藩士・青山延于の四男として誕生しました。幼少期から学問に励み、江戸で古賀侗庵に師事しました。その後、水戸弘道館に奉職し、訓導として教鞭を執りました。しかし、安政の大獄で永蟄居となった主君・徳川斉昭の雪冤を訴えようとしたことが露見し、一時免職処分を受けます。

嘉永6年（1853年）に弘道館に復職、慶応2年（1866年）には教授頭取代理と彰考館権総裁に昇進し、その才能を発揮しました。しかし、王政復古後の戊辰戦争では、藩内の対立に巻き込まれます。会津戦争後、水戸を急襲した諸生党によって弘道館が占拠されると、病身ながらも水戸城へ向かおうとしましたが、道中敵対する諸生党に囲まれてしまいます。しかし、旧知の人物の計らいで命を救われました。

維新後、藩政を独占した武田金次郎によって、諸生党との関係を疑われ蟄居処分を受けます。職を失い、邸宅も没収され、困窮した生活を送りましたが、廃藩置県によって放免され、東京へと移り住みます。その後、東京府庁や新政府の修史局で勤務し、晩年は著述活動に励み、水戸近くの河原子海岸で静かな余生を送りました。

人物像

延寿の人となりは、外孫の山川菊栄の著書『覚書 幕末の水戸藩』に詳しく描かれています。若年期は槍術や水泳に長け、特に槍術の腕前は主君である徳川斉昭から鉄の槍を授けられるほどでした。このことから「鉄槍」という号がつけられました。

四男であったため家督を継ぐ必要がなく、自由に生活を送ることができました。そのため、家族や門弟に対して分け隔てなく接し、身寄りのない妻の生母の面倒も見ていました。快活で世話好きな性格から、多くの人に慕われ、相談事を持ちかけられることも多かったようです。政治的には、父や長兄の友人であった藤田東湖の影響を受け、斉昭の雪冤運動に参加しますが、その一方で、藩内の派閥抗争には距離を置いていました。

弘道館戦争では、敵対する諸生党にも旧知の人物が多かったため、命を救われたものの、結果としてそれが通敵行為とみなされ、蟄居処分につながりました。しかし、その人柄から、敵味方問わず多くの人に慕われていたことがわかります。

著作と親族

延寿は、『常北遊記』『大八洲遊記』『遊北海道記』『鉄槍斎文鈔』『皇朝金鑑』『鉄槍斎詩鈔』など、多くの著作を残しました。また、妻・きくとの間に一男二女をもうけました。息子の量一は絵画に長けていましたが、若くして病死しました。娘の千世は東京女子師範学校を首席で卒業後、森田龍之助と結婚。もう一人の娘ふゆは森家に嫁ぎました。

孫の菊栄は、社会主義者・婦人運動家として活躍し、祖父である延寿の遺した日記や書簡をもとに『武家の女性』『覚書 幕末の水戸藩』を著し、延寿の生涯を後世に伝えました。

年譜

1820年（文政3年）：水戸城下に出生。
1838年（天保9年）〜1839年（天保10年）：江戸に滞在。
1841年（天保12年）：弘道館に出仕。
1843年（天保14年）：弘道館訓導。
1846年（弘化3年）：主君・斉昭の雪冤運動が露見し免職。
1853年（嘉永6年）：弘道館に復職。
1866年（慶応2年）：弘道館教授頭取代理および彰考館権総裁。
1869年（明治2年）：蟄居処分を受ける。
1871年（明治4年）：廃藩置県により放免。
1872年（明治5年）：東京に転居。
1879年（明治12年）：官職を辞する。
1906年（明治39年）：死去。

関連書籍

山川菊栄『武家の女性』岩波文庫、1983年 ISBN 9784003316214
山川菊栄『覚書 幕末の水戸藩』岩波文庫、1991年 ISBN 400331624X

青山延寿は、激動の幕末を生き抜いた水戸藩の儒学者・史学者であり、その人柄は多くの人々に慕われました。彼の生涯は、外孫である山川菊栄によって詳細に記録され、今日でも私たちに語り継がれています。

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