弥山 (広島県)

弥山（みせん）

広島県廿日市市宮島町に位置する弥山は、標高535メートルの山で、宮島の中央部に広がっています。この山は古くから信仰の対象とされ、多くの人々に親しまれています。弥山は、2013年に新たに建て替えられた「宮島弥山展望休憩所」が山頂に設置されており、訪れる観光客にとっての休憩場となっています。初代内閣総理大臣、伊藤博文は「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と評しました。弥山は、瀬戸内海国立公園に位置し、周辺の海域や島全体が美しい自然環境に囲まれています。また、弥山の山麓は、ユネスコの世界遺産である厳島神社の登録区域の一部に該当し、その歴史的な価値が高く評価されています。

弥山の北側斜面には、国の天然記念物とされている「弥山原始林」が広がり、暖温帯性針葉樹のモミと南方系の高山植物ミミズバイが共存している特異な植生が見られます。山を登る際には、宮島特有の鹿に出会うこともあります。

弥山の歴史は深く、平安時代の806年に空海（弘法大師）がこの山を開山し、真言密教の修験道場となったとされています。山頂の近くには御山神社があり、他にも大聖院の多くの堂宇が山麓に点在しています。このように、弥山は古くから信仰の対象として多くの参拝者を受け入れてきました。山名の由来には、山の形が須弥山に似ているという説や、元は「御山」と呼ばれていたことが変化して「弥山」になったという説があります。山頂にある三角点の名称も「御山」となっています。

また、弥山には古代の信仰の跡が残っており、山頂一帯には巨石群が散在しています。これらの巨石群は磐座として信仰の対象となり、古墳時代以降これらの場所で祭祀が行われたと考えられています。弥山の北側尾根からは古墳時代から奈良時代への祭祀遺物が出土しており、これを証拠に山岳信仰が始まった時期が確認されています。

弥山への登山道は複数あり、宮島桟橋から厳島神社を経由して山頂を目指すことができます。代表的な登山コースには、ロープウエーを利用する宮島ロープウエーコース、紅葉谷川に沿って登る紅葉谷コース、夕日観音を経由する夕日観音コース、美しい石段が続く大聖院コース、さらに大元公園から岩屋大師を経由する大元公園コースがあります。これらのコースはそれぞれ所要時間が異なり、登山者のレベルや体力に応じて選ぶことができます。

弥山には「七不思議」と呼ばれる不思議な現象も存在します。例えば、消えずの霊火は空海が焚いた火が1,200年間燃え続けたとされ、大茶釜の湯は万病に効く霊水と信じられています。その他にも、干満岩や曼荼羅岩、錫杖の梅といった興味深いスポットがあり、訪れる人々を魅了しています。自然と歴史が融合する弥山は、登山や観光、信仰の場として、多くの人に愛され続けています。

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