弥生慰霊堂

弥生慰霊堂について

弥生慰霊堂は、東京都千代田区の北の丸公園内にある慰霊施設です。かつては「弥生神社」や「弥生廟」として知られていました。この施設は、警視庁及び東京消防庁の殉職者を祀るために建てられました。

施設の構造

慰霊堂の社殿は、神社建築に近い構造をしています。拝殿と本殿で構成されており、本殿は神明造の屋根を持っていますが、千木や堅魚木はありません。しかし、神明造の特徴である鞭懸が残されています。拝殿は吹き抜けの土間となっています。参道入口には狛犬のような像があり、本殿正面脇には燈籠が設置されています。これらの特徴から、かつて神社であった頃の面影を感じることができます。境内には「御野立所記念碑」も存在します。

歴史

弥生慰霊堂の歴史は、1877年（明治10年）の西南戦争にまで遡ります。この戦争で戦死した警察官は、東京招魂社（現在の靖国神社）に祀られましたが、凶悪犯逮捕や災害警備で殉職した警察官への追悼はありませんでした。1881年（明治14年）頃から、警察・消防殉職者のための警視庁招魂社創建の動きがあり、1885年（明治18年）10月7日、「弥生神社」が創建されました。この名前は、創建地である本郷区向ヶ岡弥生町に由来します。最初に祀られたのは、1871年（明治4年）以降の殉職者94柱と特別功労者2柱の計96柱でした。

その後、弥生神社は1887年（明治20年）に芝公園、1890年（明治23年）に警視庁鍛冶橋庁舎構内、1911年（明治44年）に青山墓地内へと遷座を繰り返しました。1931年（昭和6年）には麹町区隼町に移転しました。

戦前は警視庁の管理下にありましたが、戦後の「神道指令」により警視庁が神社を管理できなくなったため、1946年（昭和21年）10月に元警視総監などの有志が奉賛会を結成しました。1947年（昭和22年）10月には、現在の千代田区代官町に遷座し、同時に名称を「弥生廟」と改めました。さらに、1983年（昭和58年）9月に「弥生慰霊堂」と改称し、慰霊祭も従来の神式から無宗教形式に変更されました。

合祀者

現在、弥生慰霊堂には2517柱が祀られています。その内訳は、特別功労者が2柱（川路利良、ガンベッタ・グロース）、殉職者が2515柱です。川路利良は近代日本の警察制度の基礎を築いた人物で、ガンベッタ・グロースは警察顧問として日本に貢献したフランス人です。

殉職者の所属別内訳は、以下の通りです（2010年10月7日現在）。

警視庁：811柱
東京消防庁：465柱
皇宮警察本部：8柱
関東管区警察局：3柱
東京都警察通信部：2柱
警防団：1228柱

祭礼

慰霊祭は、当初10月13日と14日の2日間で行われていましたが、現在は毎年10月13日の前後に実施されています。10月13日は川路利良の命日です。2010年の慰霊祭は10月7日に行われました。慰霊祭に関連して、当日には日本武道館で警視庁、東京消防庁、皇宮警察本部の職員による柔道・剣道の試合や、音楽隊による演奏会も開催されます。

アクセス

東京メトロ・都営地下鉄「九段下駅」
駐車場：北の丸公園駐車場を利用可能

関連施設・人物

靖国神社
戦争祈念施設
増田神社（佐賀県唐津市）：コレラに苦しむ住民のために尽力し殉職した増田敬太郎巡査を祀る神社
森川清治郎：台湾で「義愛公」として土地神として崇められている人物
獅頭山：台湾総督府警察の廣枝音右衛門警部が祀られている場所

参考文献

警視庁創立100年記念行事運営委員会 編『警視庁百年の歩み』1974年1月15日

もう一度検索