弦楽のためのアダージョ

弦楽のためのアダージョ

『弦楽のためのアダージョ』は、アメリカの作曲家サミュエル・バーバーによって作曲された、弦楽合奏のための作品です。作曲者名から『バーバーのアダージョ』とも呼ばれています。

概要

元々は、バーバーが作曲した『弦楽四重奏曲 ロ短調 作品11』の第2楽章を弦楽合奏用に編曲したものです。その後、『アニュス・デイ』という無伴奏混声合唱曲にも編曲されました。

この楽曲は、すすり泣くような旋律と、中間部終わりの激しく感情が爆発するようなクライマックスが特徴です。

タイトルの『アダージョ』は、楽曲の速度を示す音楽用語であり、この楽曲の演奏時間は約10分程度です。

1938年11月5日に、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮、NBC交響楽団によって初演されました。また、DJのティエストによって編曲・アレンジされた同名の曲も存在します。

幅広い使用例

『弦楽のためのアダージョ』は、その感情を揺さぶる旋律から、様々な場面で使用されています。

アメリカでは、ジョン・F・ケネディ大統領の葬儀で使用されたことで広く知られるようになりました。それ以来、個人の訃報や葬送、悲劇的な出来事の慰霊祭などで定番曲として使用されています。しかし、バーバー自身は生前、「葬式のために作った曲ではない」と語っていたそうです。

日本においては、昭和天皇の崩御の際に、NHK交響楽団の演奏が放映されました（他の曲目：バッハ「アリア」、ブラームス「交響曲第4番」）。

機会音楽としての使用例

第二次世界大戦後のGHQ占領下の日本での最初のラジオ放送
ジョン・F・ケネディの葬儀
アメリカ同時多発テロから1年後に行われたニューヨーク市でのニューヨーク世界貿易センタービル跡地での慰霊祭
東北地方太平洋沖地震に起因する東日本大震災後の、仙台フィルハーモニー管弦楽団による復興コンサート

映画での使用例

『プラトーン』
『エレファント・マン』
『ロレンツォのオイル/命の詩|ロレンツォのオイル_命の詩』
『アメリ』
『恋に落ちる確率』
『ヒミズ』

テレビドラマでの使用例

『ER緊急救命室』第Xシリーズ
『冬のソナタ』
ドラマ『蘇える金狼』第9話
山田太一ドラマ『終わりに見た街』（2005年版）
『のだめカンタービレ』第8話
『華麗なる一族』（2007年版）最終回
『謎解きはディナーのあとで』最終回
『剣客商売』（藤田まこと版）第３シリーズ第４話、第４シリーズ最終話

フィギュアスケートでの使用例

アリョーナ・レオノワ（ロシア・女子）2011-2012年シーズン・フリースケーティング
ジェレミー・アボット（米国・男子）2014-2015年シーズン・フリースケーティング

その他

コンピューターゲーム『ホームワールド』
コンピューターゲーム『銀河英雄伝説IV』
* William Orbit アルバム『Pieces In A Modern Style』。後にこの曲のフェリー・コーステンによるリミックスが流行しました。

『弦楽のためのアダージョ』は、その深い感情表現と普遍的な美しさで、時代を超えて多くの人々の心を捉え続けている作品です。

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