張全昌

張全昌（ちょう ぜんしょう）の生涯：明末の動乱を駆け抜けた軍人

張全昌（生没年不詳）は、明末の混乱期に活躍した軍人です。本貫は楡林衛で、張承廕の子として生まれました。

初期のキャリアと農民反乱鎮圧

張全昌は父の恩恵により官職を得て、霊州参将にまで昇進しました。1631年（崇禎4年）には、同僚の趙大胤と共に、農民反乱軍である点灯子を攻撃。この戦いを皮切りに、郃陽や韓城で連戦連勝を重ね、その武功は高く評価されました。巡撫の練国事は、二人の功績を称え、副将の位を加えるよう朝廷に要請。趙大胤は耀州と富平の間、張全昌は郃陽と韓城の間に駐屯し、それぞれ東西から反乱軍を牽制しました。1632年（崇禎5年）には、兄の張応昌の後任として定辺副総兵に任命され、曹文詔と共に反乱軍討伐に貢献しました。

宣府総兵官への昇進と後金軍との戦い

1633年（崇禎6年）、張全昌は署都督僉事に抜擢され、宣府総兵官に任命されました。この時、兄の張応昌は山西総兵官を務めており、兄弟揃って国境防衛の要職に就くこととなりました。1634年（崇禎7年）には、後金軍が西征してチャハルを討伐した後、明の北辺に侵攻。龍門、新城、赤城を包囲し、保安州を陥落させました。張全昌は鎮城で籠城戦を展開し、後金軍の侵攻を食い止めました。その後、後金軍が西進すると、応州へ兵を進めましたが、援軍が得られず苦戦を強いられました。最終的には渾源まで進軍し、勝利を報告しましたが、その後、後金軍の再侵攻により万全右衛が陥落するなど、戦況は悪化。兄の張応昌が解職された後は、その軍勢も引き継ぎましたが、文官からの糾弾を受け、曹文詔と共に辺境防衛の兵卒に降格させられました。

農民反乱鎮圧への復帰と失態

山西巡撫の呉甡の要請により、張全昌と曹文詔は援勦総兵官として復帰し、反乱軍の鎮圧にあたりました。1635年（崇禎8年）には、洪承疇と合流し、汝州の反乱軍を撃破。その後も、関中各地で反乱軍との戦闘を繰り広げました。しかし、都司の戦死や有力な将軍の戦没が相次ぎ、明軍の勢力は衰退。反乱軍は西安を狙い、張全昌は曹変蛟と共に華州で反乱軍を迎え撃ちましたが、戦況は好転しませんでした。さらに、部下の兵士が規律を乱し、河南で略奪行為を行ったため、張全昌は河南巡撫の怒りを買い、迷走の末に反乱軍に捕らえられてしまいました。

捕虜生活と帰順、そして晩年

捕虜となった張全昌は、反乱軍から官軍への説得を求められましたが、総理の盧象昇はこれを受け入れず、張全昌の責任を追及しました。その後、張全昌は脱走して帰順し、盧象昇と和解。山西・陝西での募兵を命じられましたが、朝廷は過去の罪を償う機会を与えませんでした。1637年（崇禎10年）には、楊嗣昌の弾劾により逮捕され、辺境防衛の一兵卒に降格させられました。

張全昌のその後の消息は不明ですが、1644年（崇禎17年）に済南総兵として広東の糧食費を着服したという記録が残っています。これは同名別人である可能性もありますが、その後の張全昌の人生を暗示する出来事として注目されます。

まとめ

張全昌は、明末の動乱期を生き抜いた軍人であり、農民反乱や後金軍との戦いにおいて数々の武功を立てましたが、晩年は不遇な境遇に甘んじました。彼の生涯は、当時の社会情勢と、官僚制度の矛盾を映し出す鏡と言えるでしょう。その波乱に満ちた生涯は、歴史研究における重要な事例として、今後の研究が期待されます。

参考文献

* 『明史』巻239 列伝第127

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