張承廕

張承廕（ちょう しょういん）

張承廕は、明代末期の武将で、その生涯は戦乱の時代を象徴しています。生年は不明ですが、1618年に戦死しました。本貫は楡林衛です。

生涯

張承廕は、父の張臣の官位を継ぎ、軍人としてのキャリアをスタートさせました。その卓越した武勇と知略により、彼は急速に昇進し、最終的には延綏副総兵にまで上り詰めました。彼は騎射の達人であり、戦場では常に勝利を収めていたと言われています。

1609年、張承廕は延綏総兵官に任命されました。当時、オルドス部の沙計と猛克什力が頻繁に明の北辺を侵犯していました。その年の冬、彼らは波羅堡と神木堡に侵攻しましたが、張承廕はこれを撃退し、多くの敵兵を討ち取りました。沙計は後に明との和睦を望みましたが、明の役人たちは彼の変節を警戒し、これを拒否しました。その後、沙計は数千の兵を率いて双山堡を攻撃しましたが、再び張承廕によって撃退されました。

1612年、沙計は再び侵攻を試みましたが、張承廕は響水堡でこれを迎え撃ち、多くの敵兵を斬首しました。この功績により、彼は都督同知の代行に昇進し、楡林衛副千戸の位を世襲することが認められました。

同年、遼東総兵官であった麻貴が罷免されると、張承廕がその後任として任命されました。着任早々、守将の祖天寿が狩猟中に蟒金諸部によって曹荘が包囲され、多くの兵士が死傷するという事件が発生しました。祖天寿は責任を問われ死罪を宣告されましたが、張承廕は着任したばかりであったため、処罰を免れました。その後、敖克らが中後所を攻撃してきましたが、張承廕はこれを撃退しました。

当時、チャハルのリンダン・ハーンをはじめとする勢力が遼東の国境を脅かしており、張承廕が着任する前に、リンダン・ハーンは3万騎を率いて穆家堡を攻撃しようとしました。しかし、参将の郎名忠らがこれを阻止し、リンダン・ハーンの軍勢は一度は退却しました。その後、ナイマン諸部が中後所や連山駅を相次いで攻撃しましたが、副総兵の李継功らがこれを撃退しました。これにより、リンダン・ハーンに服属していた三十数部が明に服属を誓い、遼西は一時的に安定を取り戻しました。しかし、張承廕は病のため一時的に官を辞し、その後、薊鎮の守備に起用されましたが、着任しないうちに再び遼東総兵官に転任しました。

1618年、後金のヌルハチが挙兵し、撫順を攻略すると、明の遼東巡撫である李維翰は張承廕を援軍として派遣しました。張承廕は副将の頗廷相、参将の蒲世芳、游撃の梁汝貴らを率いて撫順に到着し、防衛体制を整えました。しかし、後金軍の圧倒的な攻撃の前に明軍は壊滅し、張承廕は蒲世芳とともに戦死しました。頗廷相と梁汝貴も脱出を試みましたが、再び戦闘に巻き込まれ戦死しました。この戦いで明軍は一万人に及ぶ死者を出し、生還できた者はごくわずかであったと伝えられています。

この敗戦は明朝廷を大いに震撼させ、万暦帝の勅命により李維翰は逮捕されました。張承廕は、その功績により少保・左都督の位を追贈され、精忠祠が建立されました。

子女

張承廕には以下の3人の息子がいました。

張応昌
張全昌
張徳昌：崇禎初年に清水営守備となり、後に保定参将、保定副総兵と昇進。農民反乱軍の鎮圧に功績を挙げましたが、1643年に死去し、特進栄禄大夫・左都督の位を追贈されました。

参考文献

『明史』巻239 列伝第127

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