張彦遠

張 彦遠について

張 彦遠（ちょう げんえん）は、中国の唐時代に活躍した士人であり、著述家および絵画史家です。彼は、山西省運城市の猗氏県で生まれ、名前は愛賓です。生没年は正確には分かりませんが、元和10年（815年）頃に生まれ、乾符4年（877年）頃に亡くなったとされています。

生い立ちと背景

張彦遠は、古代中国の名門家系に属しており、西晋の名臣である張華を祖先に持つ家柄です。彼の家族は「三相張家」と呼ばれ、高祖父の張嘉貞、曾祖父の張延賞、祖父の張弘靖はそれぞれ唐朝の宰相を努めたことで、名声を博しました。また、張家は文芸や芸術を尊び、書道や音楽に秀でた家系でもありました。

父親の張文規は殿中侍御史という役職にあり、張家の文化的背景が彼の成長に大きな影響を与えました。張家は代々書画の収集に励んでおり、彼らのコレクションは朝廷の所蔵に匹敵するものでしたが、宦官の嫉妬によって多くの書画が没収されてしまいました。また、828年の朱克融の乱によって、残されたコレクションの大部分を失ってしまいます。このような出来事は彦遠にとって大きな悲しみとなり、彼は生涯にわたって先祖のコレクションを失ったことを悔やんでいました。

影響と業績

張彦遠がこの失ったコレクションへの思いを胸に秘め、書画の収集に情熱を注いだことが、彼の代表作である『歴代名画記』の執筆に繋がるのです。この作品は中国最古の絵画史書とされ、彼は「画史の祖」と呼ばれるようになりました。彼の著作は、美術の歴史だけでなく、歴史的な背景をも理解するための貴重な資料として、広く評価されています。

晩唐の時代、科挙制度が浸透し新興勢力が台頭する中、彼は伝統的な貴族社会の崩壊を目の当たりにしました。官僚としての道は、彼が30歳を迎えた頃から始まります。彼はまず低級の官吏としてスタートし、その後、舒州の地方官を経て、大中元年（847年）には尚書省の祠部員外郎に晋升しました。また、僖宗の時代には大理卿に任命され、国史である『続唐暦』の編纂にも関与しています。

張彦遠は、典籍や歴史、故実、卜占、医薬、天文、仏教など多岐にわたる知識を持っており、その博識ぶりと才能は周囲から高く評価されていました。幼少期を文人たちが集う環境で過ごしたこともあり、彼は早くから書画に対する深い理解を身につけていました。

結論

張彦遠の生涯は、彼の著作を通して、唐代の士人としての彼の位置づけや美術の発展における貢献を明らかにしています。彼の業績は、現在も中国美術史を理解する上で重要な基盤となっています。このように、張彦遠はその生涯を通じて、多くの文化的価値を後世に残した人物として記憶されています。

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