張華

張華（ちょう か）：西晋を支えた名臣の生涯

張華（232年 - 300年）は、三国時代から西晋にかけて活躍した政治家であり、文人です。字は茂先といい、范陽郡方城県（現在の河北省廊坊市固安県）の出身です。西晋初期の混乱期に国を支えましたが、最後は悲劇的な死を遂げました。

生い立ちと魏での活躍

幼い頃に孤児となり、羊飼いとして生計を立てていた張華ですが、その才能はすぐに認められました。范陽太守の鮮于嗣に推挙され太常博士に任じられると、同郷の盧欽も司馬昭に彼を推挙したため、佐著作郎という歴史編纂の補佐の役職に就きます。その後、中書郎（宮中の事案に関与）を兼任し、その才能を遺憾なく発揮しました。

西晋への仕官と呉征伐への貢献

西晋が成立すると、張華は黄門侍郎に任じられ、武帝司馬炎からも高く評価されます。呉征伐では、羊祜や杜預らと共に主戦論を唱え、その実現に大きく貢献しました。特に、羊祜の死後、その遺志を継ぎ、司馬炎を説得して呉征伐を断行させました。呉の平定後、張華の名声は高まり、歴史書の編纂や儀礼の改定など、重要な事業に関与するようになります。

幽州統治と中央からの疎外

呉平定後、張華は昇進を妬む者たちの讒言により、都督幽州諸軍事に任じられ、中央から遠ざけられます。しかし、幽州では異民族との融和政策を推進し、その統治手腕を発揮しました。その功績により再び中央に召還される話も出ましたが、馮紞の讒言により実現しませんでした。

恵帝の時代：中央復帰と賈南風との関係

恵帝の即位後、張華は太子少傅として中央に復帰します。しかし、当時の朝廷は皇后の賈南風が実権を握っており、張華は彼女に与して政治を行うことになります。汝南王司馬亮と録尚書事衛瓘を排除するために楚王司馬瑋をそそのかし、賈南風に司馬瑋の誅殺を進言するなど、権力闘争に巻き込まれていきます。

宰相として国を支える

賈南風が実権を握ると、張華は宰相として国政を担います。暗愚な恵帝と、傍若無人な賈氏一族が跋扈する中、張華は裴頠や賈模らと協力して国政を支え、国内の安定を保ちました。その功績により壮武郡公に封じられます。

司馬倫との対立と最期

しかし、趙王司馬倫とその側近である孫秀との対立が深まります。司馬倫は賈氏に取り入り権勢をふるいますが、張華は司馬倫の台頭を警戒していました。賈南風の廃立問題では、保身を図り決断を先送りにしたことが、胡三省から厳しく批判されています。

300年、司馬倫はクーデターを起こし、賈南風を廃します。張華は司馬倫に協力を拒否したため、捕らえられ処刑されました。享年69歳。その死は多くの人々に悼まれました。

死後の名誉回復

司馬倫が誅殺された後、張華の冤罪が明らかになり、名誉が回復されました。その功績と人柄は、後世にも高く評価されています。

人物像と逸話

張華は学問に通じ、記憶力に優れ、優れた判断力を持っていました。また、若い頃から礼儀正しく、困窮する人々を助けるなど、義侠心に富んだ人物でした。人材を登用することにも熱心で、多くの有能な人物を推挙しました。

書籍を愛し、多くの書物を所有していたことでも知られています。また、『博物誌』などの著作を残し、文人としても才能を発揮しました。

その生涯は、激動の時代を生き抜いた政治家・文人の典型であり、その功績と悲劇的な最期は、後世に語り継がれています。

もう一度検索