張徳輝 (元)

張徳輝の生涯と業績

張徳輝（ちょう とくき、1196年 - 1275年）は、モンゴル帝国、大元ウルスに仕えた影響力のある漢人の一人です。彼の名は耀卿であり、太原府交城県で生まれました。学問への情熱が強く、幼少期から研究に励んだことで知られています。金朝末期の貞祐年間には御史台の官吏として活動し、正義感から冤罪の疑いのかかった僧侶を救った逸話も伝わっています。

金朝が滅亡した後、張徳輝は黄河を渡り、漢人の世侯史天沢の保護を受けました。その後、彼は真定路の経歴官に任命され、1235年には史天沢に従い第一次南宋への侵攻に参加しました。この際、逃亡兵の処刑寸前に対応し、その兵士たちを穴城に配備することで功績を挙げています。また、光山県の農民を説得して降伏させるなど、統治能力を発揮しました。

1247年、彼は皇族のクビライから招かれ、儒教の重要性を訴える中で評価され、その後魏璠や元好問、李冶と共にクビライに仕官しました。彼の功績は1248年にも続き、孔子廟についての質問に対する応答や賢者の重用を提言しました。同年の夏には、他の著名な儒者たちをクビライに推薦し、教育改革への貢献を果たしました。

1252年には元好問と共にクビライから儒教大宗師の称号を贈られ、その後真定路の学校の設立にも関与しました。1260年、クビライが即位すると、張徳輝は河東南北路の宣撫使に任じられ、地域の民生の安定に尽力しました。この時、兵権を利用した不正が問題視され、彼はそれをクビライに直訴し、成功裏に兵士たちを民に帰すことができました。

1261年にはさらに優秀な成績をクビライから評価されましたが、反発を受けてその後罷免されました。1266年には参議中書省事となり、1268年には御史台の侍御史に任命されるも、自己の信念から辞退しました。その後もクビライとの議論を重ね、御史台の制度改革に苦心し続けました。彼は、従来の法律が不明確な状況での法執行の難しさを指摘し、より強固な制度を設けるよう訴えました。

張徳輝は河東に赴任する以前、官吏による苛酷な収奪が民を苦しめていたことを重視しており、モンゴル帝国に仕官してからはこの問題の改善に尽力してきました。彼の剛直な性格と正義感は周囲に強い影響を与え、同僚や部下の尊敬を集めました。また、元好問や李冶らと共に「龍山三老」としても知られました。彼は80歳で生涯を閉じ、この長い人生で得た知識と経験を後進に伝えることに努めました。

このように、張徳輝の生涯は、ただの官吏としての活動にとどまらず、教育、法律、地域発展における顕著な貢献を残したものでした。彼の姿勢や取り組みは、後の歴史にも多くの教訓を提供しています。

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