張恭 (曹魏)

張恭（ちょう きょう）

張恭（生没年不詳）は、後漢末期から三国時代の魏に仕えた武将です。敦煌郡の功曹という地方官から、その卓越した才能と人徳によって頭角を現し、魏の時代には関内侯、西域戊己校尉という要職を歴任しました。

混乱の時代の敦煌

当時の敦煌郡は、群雄割拠の時代にあって、周辺の酒泉郡の黄華、張掖郡の張進といった勢力から虎視眈々と狙われる不安定な状況でした。中央との連絡も滞りがちで、まさに風前の灯火とも言える状況だったのです。太守の馬艾が亡くなると、後任が定まらず、郡内は混乱の色を濃くしていきました。

このような状況下で、張恭はその人望と学識の高さから、長史の代行に推挙されます。張恭は、まず事態を打開するために、当時朝廷の実権を握っていた曹操のもとに子を派遣し、太守の派遣を要請しました。しかし、子の派遣は困難を極めます。酒泉郡で黄華に抑留され、脅迫を受けたのです。しかし、子は断固として黄華に屈服しませんでした。

この知らせを受けた張恭は、綿密な戦略を練り上げます。まず、従弟に軍を率いさせ黄華を攻撃する一方で、自身も兵を率いて黄華と張進の目を欺きました。そして、密かに精鋭の騎兵を派遣し、朝廷から派遣された正式な太守である尹奉を迎えることに成功したのです。この一連の動きは、張恭の卓越した政治手腕と軍事的な才能を如実に示しています。

その後、黄華が金城太守の蘇則に降伏したことで、張恭の子は無事に敦煌へ戻ることができました。敦煌郡は、張恭の活躍によって、ようやく安定を取り戻したのです。

魏への貢献と死後

魏王朝が成立すると、張恭はその功績が認められ、関内侯に封じられます。さらに、西域戊己校尉という西域方面の軍事を統括する重要な役職に任命されました。しかし、後に中央への召喚を受けましたが、病気を理由に辞退し、太和年間に亡くなりました。その功績を称えられ、執金吾（首都の警備を担当する高官）を追贈されています。

張恭の功績は、子や孫にも引き継がれました。子は金城太守となり、父と同様に名声を高めました。孫は、西晋の時代に広漢太守・匈奴中郎将を歴任し、曾孫も西晋の黄門郎となっています。張恭の家系は、代々官僚として活躍し、その名を歴史に刻みました。

張恭は、混乱の時代に、智略と人徳をもって故郷を守り抜き、魏の発展に貢献した傑物でした。彼の功績は、後世に語り継がれるべきものでしょう。

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