張裕 (後漢)

張裕（ちょう ゆう）

張裕（生没年不詳）は、後漢末期の蜀に仕えた学者・政治家です。字は南和といい、益州蜀郡の出身でした。『三国志』蜀志にその名が記されています。

人物と事績

張裕は、図讖（予言や占いの類）の術に秀でており、その才能は同郷の周羣をも凌ぐほどだったと伝えられています。逸話として、まだ無名だった鄧芝の人相を見た際に、「70歳を過ぎて大将軍となり、侯に封じられるだろう」と予言したという話が残っています。年月が経ち、鄧芝は予言通り70歳を超えた高齢で車騎将軍にまで上り詰めました。

劉璋に仕えていた頃、劉備との会談に同席した際、劉備の髭が薄いのを見て「潞涿君（ろたくくん）」とあてつけるように言ったため、劉備の恨みを買ってしまいました。

その後、劉備が益州を制圧すると、張裕もその家臣となります。劉備が漢中を攻略しようとした際、張裕は敗北を予言しましたが、劉備は曹操軍を退却させ、漢中を手中に収めます。この結果、張裕の予言は外れたと見なされました。

しかし、建安末年、張裕は漢朝の滅亡と劉備の死を予言します。この予言を聞いた者が密かに劉備に訴え出たため、劉備は以前からの不遜な態度も考慮し、漢中についての予言が外れたことを理由に張裕を処刑しようとしました。諸葛亮は張裕の助命を嘆願しましたが、劉備は「美しい蘭でも門に咲いていれば刈り取らなければならない」と言い、処刑を実行しました。

皮肉なことに、張裕の予言通り、後に魏が成立して漢は滅亡し、劉備自身も病死しました。彼の予言は、結果的に的中することになったのです。

張裕の生涯は、その才能と予言能力、そして劉備との確執によって彩られた、波乱に満ちたものでした。

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