鄧芝

鄧芝の生涯

鄧芝（とう し、? - 251年）は、中国後漢末期から三国時代にかけて活躍した政治家および武将で、字は伯苗と名乗っていました。彼は荊州南陽郡新野県、現在の河南省南陽市新野県出身で、光武帝の功臣である鄧禹の末裔にあたります。鄧芝の母は女道士の鄭天生であり、彼には鄧良という子がいました。

経歴

鄧芝は、劉璋の治世下で益州に入国しました。彼は当初無名でしたが、人相に優れた張裕から未来を見抜かれ、「70歳を過ぎて大将軍になり、侯に封ぜられる」と評価されています。その後、巴西の太守である龐羲のもとに身を寄せ、士を好む彼に仕官します。

劉備が益州を平定した際、鄧芝は彼に仕官し、郫県の官邸を任されることとなりました。劉備が郫を訪れた際、鄧芝は高く評価され、以降、彼は郫県令や広漢太守としての役職を歴任します。彼の統治は清廉潔白で厳格であったため、治績を挙げ、最終的には尚書となりました。

223年に劉備が崇められた後、蜀漢は劉禅がまだ若く、魏や呉と敵対して危険な状況に直面します。このとき、鄧芝は諸葛亮に請われ、呉へ使者として派遣されました。そこで、対話を通じて、和平を築くことに成功し、孫権は魏との断交を決断し、蜀との同盟を再締結しました。孫権はその後、鄧芝のことを称賛し、彼の働きに感謝の意を表しました。

諸葛亮が漢中に進駐する際、鄧芝は中監軍および揚武将軍に任命され、第一次北伐では趙雲と共に戦闘に従事しましたが、軍勢が劣っていたために曹真の軍に敗北します。諸葛亮の死後、彼は前軍師、前将軍、兗州刺史及び陽武亭侯となり、その後は江州督としても活動しました。

その時代、鄧芝は東の前将軍、南の鎮南大将軍馬忠、北の鎮北大将軍王平と並んで称賛され、名声を博しました。243年には車騎将軍に任命され、仮節も与えられました。

248年、涪陵郡では豪族・徐巨による反乱が発生しましたが、鄧芝はこれを鎮圧し、民衆の安堵に貢献します。しかし、帰途に猿の親子を見かけた彼は、昔から得意とする弩を使い、それを射たことで自らの行為を悔い、弩を水中に投げ入れたことで自身の死期を悟るのです。そして251年にこの世を去ります。

人物像

鄧芝は明確な賞罰を持っており、兵士たちには十分な施しを行いながらも、自身は質素な生活を心掛け、私腹を肥やすことはありませんでした。公位にありながら、私生活では妻子を貧しくさせ、財産も残していません。彼の性格は剛毅であり、飾り気のないものでしたが、士人たちとの交わりは苦手でした。彼は他者を高く評価することは少なかったものの、姜維の才能だけは認めていました。

また、鄧芝は少し驕り高ぶった面を持ち、彼の大将軍としての地位にもかかわらず、周囲の人々は敬遠したものの、宗預だけは彼に屈しなかったとのエピソードもあります。

三国志演義における描写

小説『三国志演義』では、鄧芝は孫権の前で自身の命を賭けて同盟を結ぶ決意を示し、孫権を感服させる役割を担っています。彼は、蜀の使者を脅かすために用意された熱された大釜に飛び込もうとするという大胆な行動を取り、これがストーリーの重要な展開の一つとなっています。

そのような彼の姿勢は、今なお多くの人に語り継がれるものです。

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