張赫

張赫（ちょう かく）

張赫（1324年 - 1390年）は、中国の元末から明初にかけて活躍した軍人です。本貫は濠州鍾離県（現在の安徽省鳳陽県）にあります。その生涯は、激動の時代を背景に、軍人としての卓越した能力と、国家への忠誠心によって彩られています。

生涯

元末の混乱期、各地で反乱が勃発する中、張赫は故郷を守るために義兵を組織しました。当初、他の勢力からの誘いを断り、独立した立場を維持していましたが、1353年、朱元璋が挙兵したとの情報を聞き、自ら兵を率いてその軍門に降りました。朱元璋は、張赫の決断と力量を高く評価し、千戸に任じ、その後の功績により万戸へと昇進させました。

1355年、張赫は朱元璋に従い、長江を渡る征戦に参加。各地を転戦し、その武勇を遺憾なく発揮しました。その功績が認められ、常春翼元帥に抜擢され、常州の守備を任されるなど、重要な地位を歴任しました。

陳友諒との戦いでは、1363年の鄱陽湖の戦いや武昌の包囲戦に参加。これらの戦いで、張赫は卓越した軍事指揮能力を示しました。1366年には、徐達に従って張士誠討伐に参加し、平江（現在の江蘇省蘇州市）を包囲。張赫の軍は、特に平江の閶門を抑え、張士誠軍の脱出を度々阻止するなどの活躍を見せました。

さらに、1367年には方国珍との戦いにも従軍し、慶元（現在の浙江省寧波市）、温州、台州（現在の浙江省台州市）の攻略に貢献しました。これらの戦いを通じて、張赫は朱元璋の勢力拡大に大きく寄与しました。

明朝が成立した1368年、張赫は福州衛都指揮副使に抜擢され、その後福州衛同知に進み、都指揮使司の代行を命じられました。当時、倭寇が東シナ海沿岸で略奪を繰り返しており、沿岸住民を苦しめていました。明の朝廷は日本に使者を派遣して倭寇の禁圧を求めましたが、効果は上がりませんでした。

張赫は、海上に長くいた経験から、しばしば倭寇の追捕にあたりました。1375年には琉球大洋まで倭寇を追い、首魁18人を捕らえ、数十人を斬首、倭船十数隻を鹵獲するという大きな戦果を挙げました。この功績により、洪武帝（朱元璋）から都指揮の印を管掌することを認められました。

1376年、興化衛（現在の福建省莆田市）に赴任した後、1378年には南京に召還され、大都督府僉事に抜擢されました。当時、遼東の軍に対する糧食補給が困難を極めており、張赫は洪武帝の命を受けて、1379年から海上輸送の監督にあたりました。遼東と江南を往来すること前後12年、計10回に及ぶ輸送を監督し、遼東に駐屯する明軍は糧食不足に悩まされることがなくなりました。

1387年、張赫はその功績により航海侯に封じられ、世襲の権利を与えられました。これは、張赫の軍事的な功績と、海上輸送における卓越した貢献を高く評価したものでした。

1390年8月、張赫は南京で病没しました。享年67歳。その死後、恩国公の位を追贈され、諡号は荘簡とされました。張赫は、その軍事的な才能と忠誠心によって、明朝の建国と安定に大きく貢献しました。

張赫の子である張栄は、雲南征服に従軍し、功績をあげて水軍右衛指揮使となりました。また、孫の張鑑は福建都指揮使となり、永楽年間には交趾に駐屯しました。張赫の一族は、その死後も明朝のために活躍し続けました。

参考文献

『明史』巻130 列伝第18
張赫墓誌

もう一度検索