彭玉麟

彭玉麟（ほう ぎょくりん、Péng Yùlín、1817年1月30日 - 1890年4月24日）は、清朝末期の武将であり、湘軍の重要な指揮官として知られています。字は雪琴といい、安徽省安慶府の出身です。

1832年、彭玉麟は父に従い、本籍の地である湖南省衡陽県に戻りました。太平天国の乱が勃発し、その勢力が湖南省にまで及ぶと、彼は地元の団練を組織し、防衛に当たりました。1853年、曽国藩が湘軍水師（水軍）を創設すると、彭玉麟はその水師提督に任命され、楊岳斌と共に水軍を率いて太平天国軍と激戦を繰り広げました。長江沿岸を転戦し、その武勇を轟かせました。

1861年、彭玉麟は広東布政使に抜擢されましたが、その後、安徽巡撫に指名され、袁甲三の軍務を補佐するように命じられました。しかし、彼は自らの専門は水軍の指揮にあるとしてこれを固辞し、改めて水師提督に任ぜられました。1862年には兵部右侍郎となり、水軍を率いて南京を包囲する曽国荃を補佐し、太平天国軍の鎮圧に大きく貢献しました。

1868年、彭玉麟は曽国藩と共に長江水師営制に関する上奏を行い、長江の防衛体制の策定を訴えました。翌年、故郷に戻りましたが、1872年からは長江水師の巡閲を命じられ、毎年その状況を視察しました。1883年には兵部尚書に抜擢され、その軍事的な手腕を高く評価されました。清仏戦争の際には広東省の防衛を担うため派遣されましたが、病のため辞職を余儀なくされました。

彭玉麟は軍人としての卓越した才能を持つ一方、軍務の余暇には絵画や詩文を嗜むという多才な一面も持っていました。彼の詩は後に『彭剛直詩集』としてまとめられ、その文学的な才能も広く知られることとなりました。彼は死後、その剛直な人柄を称えられ、剛直の諡号を贈られました。

彭玉麟は、激動の時代に生きた武人として、また文化人として、その名を歴史に刻みました。彼の生涯は、清朝末期の歴史を語る上で欠かせない重要な要素となっています。

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