役者 (ちあきなおみの曲)

シングル「役者」

「役者」（やくしゃ）は、歌手ちあきなおみが1988年3月1日にリリースしたシングルである。この作品は、彼女のキャリアにおける重要な転換期に発表された楽曲として知られている。

作詞は情感豊かな言葉を紡ぐ荒木とよひさ氏が、そして作曲は心に響くメロディーラインで知られる浜圭介氏が担当した。この強力な制作陣によって生み出された「役者」は、ちあきなおみの表現者としての新たな側面を引き出す一曲となった。

発売に至る背景

ちあきなおみは、表現者としてのキャリアにおいて、1978年に一つの大きな節目を迎えました。この年、俳優の郷鍈治氏との結婚を経て、彼女の音楽活動は新たな局面を迎えます。

結婚と前後して、所属レコード会社をビクターエンタテインメントに移籍。この時期の音楽活動は、主にアルバム制作に焦点が当てられており、中でも既存の楽曲を独自の解釈と表現で歌い上げるカバー作品群が中心となっていました。公の場での歌唱披露の機会は減少し、じっくりと音楽に向き合うスタイルへと変化していったのです。

しかし、1988年、ちあきなおみは再び表舞台へと立つことを決意します。長年籍を置いていたテイチクエンタテインメントへ再移籍を果たしたのです。これは、約10年間、一部の活動を除いて公の場での歌唱を控えていた彼女が、テレビの歌番組への出演を含め、より積極的かつ本格的に歌手としての道を再び歩み始めることを意味していました。

そして、この華々しい復帰の狼煙を上げる作品として世に送り出されたのが、本シングル「役者」です。オリジナルシングルとしてのリリースという点では、実に5年ぶりとなる待望の新曲発表であり、当時の音楽ファンや関係者から大きな注目を集めました。本作は、ちあきなおみが再び第一線で歌手活動を展開していく上での、重要な出発点となったのです。

収録曲

本シングルには、表題曲を含む2曲が収録されています。いずれも作詞は荒木とよひさ氏、作曲は浜圭介氏によるものです。

役者 [4:11]
編曲：倉田信雄

表題曲「役者」は、人生や人間関係を舞台に見立てたような、深く内省的な歌詞が印象的な楽曲です。倉田信雄氏による編曲が、楽曲の世界観をさらに引き立てています。収録時間は4分11秒です。

悲しみを拾って [4:52]
編曲：川口真

カップリング曲として収録された「悲しみを拾って」は、川口真氏が編曲を担当。表題曲とは異なるアプローチで、悲しみという感情を拾い上げ、昇華させていくような世界観が表現されています。収録時間は4分52秒です。

両曲とも、荒木とよひさ氏と浜圭介氏ならではの叙情性と、ちあきなおみの圧倒的な歌唱力が融合した、聴き応えのある楽曲と言えるでしょう。

まとめ

シングル「役者」は、ちあきなおみが歌手活動を本格的に再開するにあたって発表した記念すべき第一弾作品です。約10年ぶりの活動再開、そして5年ぶりのシングルリリースという背景を持つ本作は、彼女のキャリアにおける重要な位置を占めています。本作は、その後の活動への期待を高めるに十分な完成度を持つ作品と言えるでしょう。

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