後藤聰一

後藤聰一の生涯

後藤聰一（ごとう そういち）は、1916年1月2日に東京都南多摩郡由井村打越（現在の八王子市打越町）で生まれました。実家は「後藤常吉水車」という精穀業を営んでおり、地域でも有数の存在でした。1933年に八王子市立商業公民学校後期を卒業後、八王子市役所に臨時職員として就職しました。

軍隊生活と市職員への復帰

市役所に勤務しながら、後藤は東京府立第二商業学校を中退し、1942年に東京主計商業学校第二本科を卒業しました。1936年には第二乙種合格で第二補充兵として入隊し、1938年に野砲第1連隊に配属されました。1942年に再び応召し、1945年には軍曹に昇進。千島列島幌筵島から小樽へ向かう際、他の艦が沈没する中、九死に一生を得ています。

敗戦後、後藤は市職員として復帰し、小林吉之助市長から総務課庶務係主任を命じられ、予算編成を担当しました。結婚式の翌日から、八王子空襲で焼失した市役所の代わりに小学校の講堂で予算編成に取り組んだというエピソードも残っています。

市職員としての活躍

その後、後藤は市職員として着実に昇進を重ね、1948年に総務課係長、同年11月に八王子市議会書記長、1951年に水道課長兼総務課秘書室長、1955年に総務課長、1959年に総務部長に就任しました。1963年には東京オリンピック八王子市事務局長も兼務しましたが、翌年に退職しました。水道課長時代には、市民の要望であった上水道の整備を実現するために奔走し、若手官僚を接待して2億円の起債を認めさせたという逸話も残っています。また、上水道開通後も漏水が多かったため、現場にスイカを差し入れ、作業員を鼓舞したと言われています。

総務課長、総務部長時代には、町村合併促進法に基づき、近隣町村との合併を推進しました。1955年には横山村、元八王子村、恩方村、川口村、加住村を、1959年には浅川町を、そして1964年には由木村を八王子市に編入しました。

教育長としての手腕

教育長時代には、人口増加に伴い小中学校の建設が急務となっていた八王子市で、「打越のセガレ」としての知名度を生かし、用地取得と建設を積極的に進めました。多い年には1年で9校もの学校を建設し、市長時代を含めると50校もの小中学校を建設しました。

市長への道

1972年、市長選に立候補を表明していた植竹圓次が病気で入院したため、後藤に白羽の矢が立ちました。当初、後藤は立候補に乗り気ではありませんでしたが、周囲の説得と半ば強引な手法により、最終的に出馬を決意しました。1973年2月11日の選挙で、自民党の推薦を受け、社会党、共産党候補を大きく引き離して当選を果たしました。

市長としての実績

市長就任後、後藤は美山町、小津町の採掘場から運ばれるダンプの過積載問題に取り組み、自動測定装置を導入して取り締まりを強化しました。また、1980年代には、市庁舎の新築移転、中央図書館の建設などのインフラ整備を進め、八王子駅北口にそごうを誘致するなど、都市の発展に大きく貢献しました。市庁舎新築移転の際には、騒音被害地区への補助金を得るため、米軍機を飛ばしてもらうよう基地司令に頼み込み、15億円の補助金を得たという逸話も残っています。

しかし、家庭系不燃ごみの運搬業務委託を巡り、職員組合からの猛烈な反発を受け、30時間も市長室に閉じ込められるなど、苦労も多かったようです。また、八王子車人形の援助など、文化振興にも力を注ぎました。

そごう誘致の背景

当時、八王子駅北口にはデパートがなく、立川駅に買い物客を奪われていました。後藤はデパート誘致に尽力しましたが、当初出店確実とされた松坂屋はお家騒動のため出店が不可能になり、三越にも断られた経緯があります。その後、事態を注視していたそごうが出店を決めたものの、売場面積を巡り商店街側との折衝を重ね、最終的に2万5000平方メートルで決着させました。

市長辞任と晩年

1980年代には、東京都市長会長を務めるなど好調でしたが、中央図書館の工事の談合、中学校の贈収賄、市庁舎建設時の収賄などの疑惑が浮上し、1983年に助役が逮捕されたことを受け、後藤は市長を引責辞任しました。

1987年には勲四等旭日小綬章を受章。引退後は、八王子車人形後援会会長、明治神宮崇敬会常務理事八王子支部長、東京八王子東ロータリークラブ会員などとして活動しました。1990年には東京八王子東ロータリークラブ10代会長を務め、1989年ポール・ハリス・フェロー、1992年には米山奨学記念功労者を受賞しています。

後藤聰一は、八王子市の発展に大きく貢献した一方で、晩年には収賄疑惑で失脚するという波乱に満ちた人生を送りました。その功績と波乱万丈な生涯は、八王子市の歴史に深く刻まれています。

もう一度検索