後藤隆幸

後藤隆幸：アニメ界を彩るベテランアニメーターの軌跡

後藤隆幸氏は、1960年秋田県生まれのアニメーター、キャラクターデザイナーです。Production I.Gに所属し、数々の名作アニメーション制作に携わってきた第一人者と言えるでしょう。

アニメーターへの道

1979年、劇場アニメ『銀河鉄道999』を鑑賞したことがきっかけでアニメ業界への道を志すことになります。高校卒業後は一旦サラリーマンとして就職しますが、アニメへの情熱を捨てきれず上京。国際アニメーション研究所に入学します。当初は背景美術を志望していましたが、同校がアニメーター養成にも力を入れていたことから、卒業後はドラゴンプロダクションに入社し、アニメーターとしてのキャリアをスタートさせました。その後、タマ・プロダクションを経て、東映動画やタツノコプロといった、日本のアニメーション史に名を刻むスタジオで経験を積みます。

出世作『赤い光弾ジリオン』とスタジオ鐘夢

1986年放送のテレビアニメ『ドテラマン』ではオープニングとエンディングの作画を担当した他、ゲストキャラクターのデザインも手掛けました。特に注目すべきは、当時、後藤氏が熱狂的なファンであった女優・歌手の斉藤由貴さんをモデルにしたキャラクター「サイコーユ鬼」のデザインです。このキャラクターと、アニメ雑誌『アニメージュ』にて連載された4コマ漫画『こまったユ鬼ちゃん』（ペンネーム：後藤隆由貴）が、後藤氏の名前を広くアニメファンに知らしめるきっかけとなりました。

そして1987年、後藤氏にとっての代表作にして出世作となるテレビアニメ『赤い光弾ジリオン』でキャラクターデザインを担当します。同作品終了後、タツノコプロ制作分室で共に多くの作品に関わった石川光久氏と共に、有限会社アイジータツノコ（現・Production I.G）を設立。取締役として経営にも参画し、Production I.Gの礎を築きました。

同時期、後藤氏は自身の主宰するアニメーション制作集団「スタジオ鐘夢（スタジオチャイム）」を設立します。このスタジオの名称は、後藤氏のアイドルであった斉藤由貴さんのアルバム名に由来しており、後藤氏の人となりもうかがえるエピソードです。タツノコプロ制作分室の部屋を間借りし、後藤氏を含む数々のアニメーターや演出家が参加。フリーランスとして『赤い光弾ジリオン』を始め、『きまぐれオレンジ☆ロード』、『エスパー魔美』など、様々な制作会社の作品に携わりました。アイジータツノコ設立に伴い、スタジオ鐘夢は発展的に解散することとなりますが、この経験が後藤氏のキャリア、そしてProduction I.Gの設立に大きな影響を与えたことは間違いありません。

特徴的な画風と高い評価

後藤氏の作品には、丸みを帯びた独特の絵柄が特徴的です。自身は『Gu-Guガンモ』や『はーいステップジュン』といった、丸っこいキャラクターを多く手がけてきたことがその理由だと語っています。一方、押井守監督からは「骨格がはっきりしていて、デッサンがしっかりしている。幅というか、ある種の曖昧さがあるので、どうにでも変えられる楽しさ・やりがいがありますね」と高く評価されています。この評価からも、後藤氏のデザインにおける高い技術力と表現力の豊かさが伺えます。

多彩な参加作品と現在

後藤氏は、テレビアニメ、劇場アニメ、OVA、ゲームなど、多岐にわたる作品に参加し、数多くのアニメーション制作に貢献してきました。『宇宙戦艦ヤマト2199』では総作画監督を務め、『HUNTER×HUNTER』、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズ、『黒子のバスケ』など、人気作品への参加も多数あります。2020年にはProduction I.Gの役員を退任し、経営からは退きましたが、現在もアニメーターとして同社に所属し、第一線で活躍を続けています。

後藤隆幸氏の作品は、その独特の絵柄と高い技術力、そしてアニメーションへの情熱によって、多くのアニメファンを魅了し続けています。今後の活躍にも期待が高まります。

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