御家人役

御家人役について

御家人役（ごけにんやく）は、鎌倉幕府における重要な制度で、将軍である鎌倉殿からの御恩に対して、御家人が果たさなければならない奉公義務としての各種の課役を指します。この制度は、御家人にさまざまな責務を課し、御家人が幕府を支える役割を果たしていました。

御家人役の種類と内容

御家人役の中心的な任務は、有事における軍役でしたが、平時にはさまざまなその他の職務も存在しました。大きく分類すると、軍事的な負担を伴う「番役」と呼ばれるものや、経済的な負担としての「関東御公事」といった内容がありました。これらには、朝廷から将軍に委任された軍事権や警察権に基づく間接的な勤役と、将軍に対する直接的な勤役も含まれます。

また、御家人役は全国の御家人全てに適用されるわけではなく、特定の地域の御家人、例えば東国や西国、あるいは特定の国に限定されることもありました。このように、御家人役は地域や状況に応じて異なる形で課されていたのです。

権限と負担の体系

御家人役の内容は、御家人の所領の規模に基づいて賦課されることが一般的でした。具体的には、「田率所課」として定義され、御家人はその責任を守護を介して果たしました。さらに、庶子の場合はその一族の惣領を介在させて役割を果たすこととなりました。この賦課体系は、幕府から守護、御家人または庶子に至るまで、複数の階層が絡むものとなっていました。

制度を支えるために用意された書類が「大田文」です。これにより、田率所課が決定され、御家人の義務が明確になりました。しかし、時代が進むにつれて、これらの負担は増大していき、特に元寇を背景に新たに設置された異国警固番役などがその過重化を助長しました。この影響で、多くの御家人が経済的に苦境に立たされ、ついには御家人領の喪失や非御家人への流出という事態を招くこととなったのです。

惣領と庶子の間の対立

御家人役を負担する上での課題として、惣領と庶子の間にも複雑な力関係がありました。惣領は、御家人役を果たさない庶子の役割を代わって果たす代わりにその所領を没収する権利を持っていましたが、これがしばしば争いを引き起こしました。一方、庶子の中には、惣領からの負担に対して反発し、守護からの直接的な賦課を希望する者も出てきました。これにより、惣領と庶子の対立は一層深まっていきました。

御家人役の社会的意義

それでもなお、御家人役として課された負担を果たすことは、当時の御家人にとって社会的地位を示す重要な証でもありました。そのため、経済的に困窮している御家人であっても、忠誠心から負担を果たそうとする者は少なくありませんでした。

鎌倉幕府以降の変遷

鎌倉幕府の崩壊後、新たに設立された建武政権は御家人制度を採用せず、御家人役に代わる新しい制度の導入を試みましたが、この政権も短命でした。さらに成立した室町幕府においても、御家人という呼称は用いられましたが、従来の御家人役に基づく課役制度は復活されることはありませんでした。これにより、御家人の役割は次第に変容していくこととなりました。

参照文献

• - 五味克夫「御家人役」『国史大辞典 5』
• - 山本博也「御家人役」『日本歴史大事典 2』

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