御後絵

御後絵の概要とその歴史

御後絵（おごえ）は、琉球国の国王の肖像画であり、沖縄に特有の芸術形式として長い歴史を持っています。その起源は不明ですが、15世紀から19世紀にかけて琉球王国の特徴を映し出す様式が確立されました。これらの肖像画は、国王の権威を強調するために、特に大きく国王を描き、周囲には重臣や従者が配置される形が一般的です。

歴史的背景

御後絵は、王が亡くなった後に描かれ、那覇市の円覚寺に納められました。また、「お扣え（おひかえ）」と呼ばれる多数の写しも作成されました。しかし、明治時代初期の琉球処分により琉球王国が終息を迎えると、御後絵は中城御殿に移されました。ところが、1945年の沖縄戦によって円覚寺と中城御殿は焼失し、大切な文化財である御後絵も行方不明になりました。

実際に所蔵されていた御後絵は、戦前に鎌倉芳太郎が撮影したモノクロ写真によってのみ残され、これが往時の証拠となりました。戦後、御後絵の復元が試みられました。1996年には佐藤文彦がアクリル絵の具などを使って御後絵を復元し、2012年には東京芸術大学による復元も行われました。

御後絵の現存と発見

2024年3月15日、沖縄県知事の玉城デニーは、アメリカで発見された文化財22点が沖縄県庁に返還され、その中に御後絵が含まれていることを発表しました。具体的には、第二尚氏第13代 尚敬王と第18代 尚育王の御後絵、さらに鎌倉の写真記録には存在しなかった第二尚氏第4代 尚清王の御後絵も見つかりました。この発見は戦後初の確認とされ、沖縄の歴史と文化にとって重要な出来事です。

返還された御後絵は、中国製の唐紙と日本製の美濃紙を基にしており、蛍光X線分析により、国王の帯や香炉の部分に金の顔料が使われていることも確認されました。これらの絵画は、2001年にFBIの盗難美術品リストに登録され、2023年春に発見の知らせが入ります。この発見は非常に驚くべきことであり、どのようにしてアメリカの退役軍人の家に到達したのかは謎が残ります。

公開と修復計画

2025年4月22日、返還された御後絵のうち、特に重要な3分割された御後絵の中央部分が沖縄県立博物館・美術館にて一般公開されました。この展示は返還後初めての公式な公開であり、多くの人々が興味を持って訪れました。さらに、沖縄県は2025年6月から「戦後80周年事業」として、御後絵4点の修復作業と調査に取り組む計画を進めています。この作業はすべて完了するまでに約6年かかると見込まれています。

御後絵は琉球の文化を象徴する重要な財産であり、その復元や公開は沖縄の歴史を再確認する良い機会となるでしょう。

もう一度検索