御神楽岳

御神楽岳：険しい峰と悠久の歴史が織りなす山岳信仰の聖地

新潟県東蒲原郡阿賀町の南東部にそびえ立つ御神楽岳は、標高1,386.5mを誇る雄大な山です。越後山脈に位置し、浅草岳とともに新潟県と福島県の県境をなす分水嶺を担っています。その険しい山容から「下越の谷川岳」、「会越の谷川岳」とも呼ばれ、急峻な尾根と岩壁が特徴です。山頂付近や東側の尾根には緑色凝灰岩が露出しており、荒々しい自然美を堪能できます。山頂には二等三角点「御神楽岳」が設置されています。

御神楽岳の周辺は、ブナの原生林が広がり、豊かな自然環境が残されています。多様な野生動物が生息し、特に県境付近の本名御神楽（標高1,266m）周辺は、林野庁の「奥会津森林生態系保護地域」に指定され、貴重な生態系の保全が図られています。山頂からは、南に本名御神楽、貉ヶ森山、会津朝日岳、南西に浅草岳、守門岳、西に矢筈岳、東に笠倉山など、県境をなす山々がパノラマのように広がり、壮大な景色を楽しむことができます。

古くから信仰の対象とされてきた御神楽岳の歴史は古く、福島県会津美里町の伊佐須美神社縁起によると、紀元前88年（崇神天皇10年）、四道将軍大毘古命と建沼河別命が蝦夷征伐の際にこの地を訪れ、「会津」と名付け、天津岳山頂に神を祀ったのが起源とされています。その後、この山は御神楽岳と呼ばれるようになり、山頂に鎮座していた神社は、その後、博士[[山]]、明神ヶ岳を経て現在の会津美里町に移転しました。

江戸時代の『新編会津風土記』には、「昔高田村伊佐須美明神此山ニ鎮座アリシ時、西山日光寺ノ僧覚道神楽ヲ奏セリ、山ノ名コレニ因ルト云」という記述があり、山岳信仰との深い関わりを示唆しています。新潟県側には「覚道の頭」と呼ばれる岩場があり、山頂付近や東側の尾根には「雨乞峰」「山伏尾根」など、修験道にまつわる地名が残されています。これらの地名からも、古くから人々の信仰を集めていたことがわかります。

御神楽岳への登山は、新潟県側と福島県側の二つのルートからアプローチできます。

新潟県側ルート
阿賀町の国道49号から新潟県道227号室谷津川線に入り、室谷地区から林道を約3.6km進むと室谷登山口駐車場に到着します。そこから雨乞峰を経由して山頂まで約4.5km、約3時間40分の登山となります。

福島県側ルート
金山町の本名ダム堤体左岸から林道本名室谷線を通り、三条林道へ分岐し、御神楽岳登山口まで約8.4km。駐車場は登山口から約7.7km手前にあります。登山口からは、八乙女ノ滝、八丁洗板、杉山ヶ崎、熊打場、御神楽岳管理舎（避難小屋）、本名御神楽を経て山頂を目指します。距離は約5.9kmで、所要時間は約4時間20分です。

御神楽岳は、その険しさゆえに遭難事故も発生しています。1970年には地元の男性が遭難しましたが、幸いにも自力で生還した事例もあります。登山を計画する際には、十分な装備と計画、そして安全への配慮が不可欠です。御神楽岳の自然と歴史に触れることで、忘れられない山岳体験が得られるでしょう。しかし、その険しさに挑む際には、万全の準備と安全対策を心がけてください。

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