御金蔵破り (映画)

御金蔵破り：大胆な翻案と豪華共演が光る時代劇異色作

1964年8月13日、東映京都撮影所製作、東映配給によって公開された時代劇映画『御金蔵破り』。主演は、東映時代劇の看板スターであった大川橋蔵と、ベテラン俳優の片岡千恵蔵。監督は、現代劇を得意とする石井輝男という、異色の組み合わせが話題を呼びました。

本作は、アラン・ドロンとジャン・ギャバン主演のフランス映画『地下室のメロディー』を基に、時代劇として大胆にリメイクされた作品です。そのため、公開当時はマスメディアから批判的な意見も出されましたが、一方で、時代劇の枠にとらわれない斬新な演出や、現代的な感性が取り入れられた異色作として、高い評価を得ることもありました。

誰も成し遂げられなかった大金庫強盗

江戸城御金蔵、誰も破ったことのない堅牢な金庫。物語は、旗本でありながら侍の生活に嫌気がさし、現在は遊郭で生きる一匹狼の緋牡丹半次（大川橋蔵）と、牢獄で江戸城御金蔵の強盗を計画していた名うての土蔵破り、煙りの富蔵（片岡千恵蔵）の出会いを描きます。

富蔵は、半次の気性に惚れ込み、強盗計画への参加を誘います。権力者に屈しない半次は、富蔵の計画に乗ることを決意。二人の計画は、徳川家康の江戸開府を祝う花火大会の日に、城内の混乱に乗じて御金蔵を襲うという大胆なものでした。

大奥の女中と盗賊の危険な恋

彼らの計画に重要な役割を果たすのが、将軍のお気に入りとなり、大奥の中臈として出世した玉屋という花火師の娘、おこう（朝丘雪路）です。半次は、おこうを策略によって誘惑し、大奥や御金蔵内部の情報を入手しようとします。

当時、大川橋蔵と朝丘雪路の交際が噂されていたことから、このキャスティングは大きな話題となり、多くの報道陣が撮影現場に詰めかけました。おこう役の朝丘雪路は、大川橋蔵演じる半次を食ってしまうほどの存在感を示し、物語にさらなる魅力を加えています。

新たな試みと時代の変化

本作は、東映の時代劇に新風を吹き込むことを目指し、現代劇を得意とする石井輝男監督を起用するという、東映にとっても新たな試みでした。石井監督は時代劇初挑戦でありながら、時代劇の常識にとらわれない自由な発想で、独自の映像を作り上げました。

また、本作は、東映時代劇の看板スターであった大川橋蔵の再起をかけた作品でもありました。当時、興行不振やスキャンダルに苦しんでいた大川橋蔵にとって、本作は重要な転換点となりました。

批評家の評価と興行成績

本作は、興行収入1億5000万円というヒットを記録しました。しかし、映画評論家からは賛否両論の評価が寄せられました。

一部からは、『地下室のメロディー』の焼き直しであると批判されましたが、大川橋蔵と片岡千恵蔵の豪華共演や、大胆なストーリー展開、そして石井輝男監督の演出手腕は高く評価されました。

作品の遺産

『御金蔵破り』は、東映時代劇の歴史において、現代劇の手法を取り入れた異色作として重要な位置を占めています。大胆な翻案、豪華なキャスト、そして時代劇の枠を超えた斬新な演出は、現代においても多くの観客を魅了し続けています。

本作は、単なる時代劇の枠を超え、時代劇に新たな可能性を示唆した作品として、映画史にその名を刻んでいます。そして、大川橋蔵、片岡千恵蔵、朝丘雪路という豪華キャストの競演は、観る者の心を掴んで離しません。

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